popoのブログ

超短編(ショートショート)

名前入りギフト

都内の高級デパートで働く、敏腕販売員の美咲。

彼女は、顧客の要望に応え、

世界に一つだけの特別なギフトを提案することが得意だった。

 

ある日、美咲のもとに、ひとりの男性から奇妙な依頼が舞い込む。

それは、亡くなった妻の名前が刻まれた、

特別な時計を作りたいというものだった。

 

男は、妻からの贈り物で、

妻との思い出が詰まった時計をなくしてしまい

復元したいと訴える。

 

美咲は、男の切実な願いに心を打たれ、依頼を引き受ける。

しかし、調査を進めるうちに、

この時計には秘密が隠されていることに気づき始める。

 

美咲は、男から渡された時計の写真をじっと見つめた。

アンティークなデザインの時計には、

確かに亡くなった妻の名前が刻まれていた。

しかし、その文字にはどこか違和感を覚えた。

 

まるで、後から刻み込まれたかのように。

 

美咲は、時計の鑑定士に依頼し、

時計の真贋を調べてもらうことにした。

 

数日後、鑑定士から結果が伝えられる。

「この時計の刻印は、後から入れたものだ。」

 

美咲は、男にこの事実を告げると、男は動揺を隠せない。

そして、あることを打ち明ける。

「実は、この時計は、妻が私に贈ったものではない。

私が、妻の死後に自分で作らせたものなんだ」

 

美咲は、男の告白に驚きを隠せない。

なぜ、男はこんなことをしたのか。

その理由を探るため、美咲は男の過去を調べ始める。

そして、ある恐ろしい事実に行き当たる。

 

男には、もう一人内縁の妻がいたのだ。

そして、その内縁の妻は、現在の妻であるはずの女性を殺害し、

あたかも純愛であったことを装うように、

その時計を偽装していた。

 

美咲は、男の恐ろしい秘密を知り、警察に相談する。

そして警察は、男と内縁の妻を逮捕し、

事件の真相を解明していく。

 

名前入りギフトは、二人の男女の愛と裏切り、

そして悲劇の物語を象徴していた。

 

美咲は、この事件を通して、

ギフトの持つ意味を深く考えさせられたのだった。

友情のレール

古くからある懐かしい遊園地。

そこに最新の技術が駆使されたジェットコースターが出来た。

その情報を得た私は友達と計画を立てる。

 

そして夏休み。

私たちは約束を果たすべく遊園地に向かった。

入園すると真っ白で大きなジェットコースターが早速お出迎え。

それを見た私は、ちょっぴり顔が青ざめる。

 

「うわぁ。楽しそう!」

そう言って隣で叫ぶ友達を前に、

今更後には引けない。

 

並んでいる間も、私の不安は大きくなる。

 

あと少しで順番という時だった。

「一緒だから、大丈夫だよ。」

友達は微笑み、私の手をそっと握りしめた。

私は、ちょっとした安心感が生まれた。

 

プルルル!

 

「いってらっしゃ~い!」

 

お姉さんが手を振って送り出す。

私の心臓はバクバクと激しく鼓動している。

 

「ねぇ!やばい!やばい!」

そう言って笑顔の友達。

 

ジェットコースターは、

ガタン。ガタン。と上っていく。

 

私は強く目をつむった。

そしてついに…

 

きゃぁぁぁあああ!!

 

急降下。急加速。そのループが繰り返される。

 

「ねぇ!目を開けてみて!」

友達の言葉にそっと目を開ける。

 

そこには、ものすごく高いところから

海が一望できる絶景が待っていた。

 

「うわぁ。すごい…」

 

と思ったのも束の間。

 

きゃぁぁぁあああ!!

 

再びジェットコースターは急降下。

 

「おかえりなさ~い。」

 

こうして私の絶叫の旅は終わった。

「はあ。はあ。もうほんと疲れちゃった。」

「ええっ?楽しかったじゃん!」

「こわいって。」

「あっ!そうだこれこれ!」

 

その指の先にはモニターがあり、

目をつぶって、大きく口を開ける、

おとぼけな私が映っていた。

 

「もう!なにこれ!恥ずかしい!」

 

「まじ不細工すぎるんだけど!」

 

「最高じゃん!さぁ次行こ!」

 

私たちはそれからも、

他のアトラクションを楽しんだり、

食事をしたりして、一日を満喫した。

 

夕暮れ時、遊園地を後にする私たち。

 

「楽しかったね。」

「うん!ほんと楽しかった!」

 

結局、私は爽快感と満足感でいっぱいだった。

ニューヒーロー

俺は学生の頃から引っ込み思案な性格だった。

 

好きな子がいても、想いを伝えることは出来なかった。

でも、それに対して悔しいとかもない。

どうせ俺なんか。だから最初から諦めていた。

 

みんなで野球をした時も、

「俺ピッチャー」「俺ショート」と

声を上げるみんなに対して、

何も言わない俺はベンチだった。

本当はみんなと野球したかった。

でも俺より上手なみんながやる方がいい。

自然とそう思っていた。

 

そんな俺はチャレンジすらしないから、

失敗、挫折もほとんどなかった。

ただただ、一日一日が過ぎていった。

 

地元の食品工場に就職した俺は、

決まった時間に出勤して、ライン作業を行うだけ。

責任感もやる気も出ない。

 

俺の趣味は絵を描くことだった。

特にアニメが好きだった俺は、

自分だけのヒーローを思いのまま描いていた。

それをある日、SNSに投稿してみた。

 

すると驚くことにバズった。

 

「かっこいいじゃん!」「色合いが好き」

「実際に動くの見てみたい」「ニューヒーロー誕生だ」

 

俺の中の何かが変わった。

 

それからというもの俺は絵を描いては投稿し続けた。

そして、それを見たアニメーションの企業から声がかかった。

 

しかし現実は甘くなかった。

「思ったより大したことないな。」

「まだ出来ないのか?」

「素人がちょっと絵がうまいくらいだろ。」

 

俺への声は冷たかった。

ああ。学生の頃のあの感じだ。

そうだよな。俺は何やってもダメなのに。

なんでこんなに熱くなってしまったんだ。

 

その時、後方から声がした。

 

「ニューヒーロー誕生だ」

 

振り返ると、上司がいた。

 

その言葉…。

 

「あれは俺のコメントだ。」

「久しぶりに胸が熱くなったよ。」

「だから君を会社に勧めた。」

 

「挑戦すれば非難もある。」

「だけどそれを乗り越えていくから楽しいんじゃないか。」

「お前はニューヒーローだろ?」

 

俺の中で変わった何かが再び震えた。

 

「はい!がんばります!」

 

「転んだら、また起き上げればいい。」

「何度だって、何度だって、起き上がればいい。」

「そして強くなるんだ。」

 

「自分に負けるなよ!」

 

上司はポンっと俺の背中を叩いた。

 

同時に俺は、

大切な何かを受け取った気がした。

記念日

「あの公園に噴水があるみたいだよ。」

「それにバラ園もあるんだって。」

「行ってみたいなあ。」

 

そんな会話が始まりだった。

 

私と彼は、公園でピクニックを楽しむために、

朝から手作りの弁当を用意していた。

私はいつもより彩り鮮やかなサラダを作り、

彼は唐揚げなどのおかずを用意する。

 

私は、シャキシャキとレタスを刻み、

トマトを彩りよく並べ、ドレッシングをかける。

 

ふと、冷蔵庫の隅に眠っていた、

小さなアボカドを思い出した。

まだ熟していない様子だったが、

思い切って半分に切って種を取り除き、

フォークで潰してサラダに加えた。

 

よし!完成。

 

私たちは、準備をして家を出る。

 

公園に着くと、私たちは

木陰にシートを広げ、弁当を取り出した。

 

私はちょっと不安ながらも、

サラダをひとくち食べる。

 

サラダは、いつものサラダとは少し違う、

爽やかな風味と滑らかな食感が特徴的だった。

 

「このサラダ、すごく美味しい!

今まで食べた中で一番だよ!」と笑顔で話す彼。

 

私は照れながらも、「ありがとう!」と答える。

 

私たちは青空の下、

美味しい弁当を食べながら、

楽しい時間を過ごした。

 

帰り道、彼はこんなことを言う。

 

「ピクニックなんて小学校以来だよ。

 ちょっと暑かったけど、楽しかったね。」

 

「それに今日のサラダは特に美味しかったよ。」

 

「楽しい思い出をありがとう。」

 

「今日と言う日を忘れないために、

 ふたりの記念日にしよう。」

 

その日以来、七月六日は私たちの

「サラダ記念日」となった。

初めてのビキニ

夏の日差しが眩しく照りつける海岸。

陽気な音楽と人々の笑い声が響く中、

私は、初めて購入した白いビキニを手に、

鏡の前で立ち尽くしていた。

 

鏡に映る自分の姿は、

今までとは全く異なるように見える。

露出度の高い水着は、身体のラインをより際立たせ、

自信をくれるはずなのに、何故か不安と葛藤が押し寄せてくる。

 

(この日の為に、ジムにも通ったのに。)

 

(こんな恰好で、本当に大丈夫だろうか…?)

 

自意識過剰な考えが頭をよぎり、

一歩踏み出す勇気が出ない。

しかし、ふと海辺から聞こえる

子供たちの笑い声に我に返る。

無邪気に遊ぶ子供たちの姿は、

まるで太陽のように輝いていた。

 

(自信を持って楽しもう!)

 

私は決心する。

鏡に映る自分に微笑みかけ、ビキニを身に着けた。

最初はぎこちない動きだったが、

徐々に体が水着に馴染んでいく。

 

海岸に出ると、潮風を感じ、太陽の光が心地いい。

 

「遅かったね。」

「可愛いじゃん!」

「スタイルよっ!」

 

友達たちの言葉に、私は自然と笑顔が溢れる。

 

「みんなも可愛い。」

 

「この日の為に頑張ったもんね。」

 

「さぁ!海入ろ。」

 

「ねぇ誰かクリーム塗ってよ~」

 

海辺の開放的な雰囲気に包まれ、

私たちには、楽しい時間がやってきた。

 

「さあ。空気入ったよ。」

 

私たちは浮き輪を手に、海へ駆け込んだ。

 

「つめたっ!」

 

「しょっぱい!」

 

キャハハハ

 

私たちは夏の貴重な時間を、

思いっきり楽しんだ。

 

「ねぇ。海の家でなんか食べる?」

「私は飲み物だけで。」

「じゃあ、みんなで買いに行こ。」

 

砂浜を歩いていると、私の隣に人影が。

「ねぇ。どこから来たの?」

「めっちゃ可愛いじゃん!」

「水着似合ってるね。」

 

若い男性たちは、激しい勢いで言葉をかけてきた。

 

友達の一人が、何か返事をしようとしたが

私の口から出た言葉の方が、少しだけ早かった。

 

「ごめんね。私たちは海を楽しみに来たの。」

 

そう言って、海辺を歩く私たちの姿は、

まるでランウェイを歩くモデルのように堂々としていた。

 

ビキニを着ることに葛藤していたあの頃とは全く違う、

自信に満ち溢れた表情で。

 

「かっこいい。」

「ね!かっこよかったよ!」

「違う。そっちじゃない!」

 

キャハハハ