popoのブログ

超短編(ショートショート)

タイムスリップ

40代になった今も、心のどこかで

当時の熱気を懐かしんでいる男女が、

あるきっかけで再び集まる。

 

華やかな照明の下、懐かしいディスコ音楽が流れ始めると、

彼らの心は若き日にタイムスリップしていく。

_____________________________

 

「ねぇ、覚えてる?あの日のディスコ。」

 

静まりかえったバーで、美奈子はグラスを傾け、慎吾に語りかけた。

慎吾は、わずかに笑みを浮かべ、遠い目をする。

 

「もちろんさ。あの、ミラーボールが煌めくフロアで、美奈子と踊った夜。」

 

慎吾の言葉に、美奈子は再びあの日の熱気を思い出した。

若かった彼らは、ディスコで出会った。

派手な照明の下、轟く重低音の中、

互いの体を求め合うように踊り明かした。

それは、人生で最も輝かしい瞬間の一つだった。

 

それから年月が流れ、二人はそれぞれの道を歩んだ。

結婚、出産、仕事……。

大人になった彼らは、あの頃の熱気を忘れかけていた。

しかし、久しぶりに再会した今、

心の奥底に眠っていたものが呼び覚まされた。

 

「あの頃に戻りたいな。」

 

美奈子の言葉に、慎吾は頷いた。

 

「うん。あの頃に戻りたい。」

 

二人は、かつてのディスコに行くことにした。

そこは、昔とは少し雰囲気が変わっていたが、

懐かしいディスコ音楽が流れている。

フロアに足を踏み入れると、若者たちの熱気に包まれた。

 

「わぁ、すごいね!」

 

美奈子は、まるで少女のように目を輝かせた。

 

「さあ。いこう。」

 

ダンスホールに出た慎吾も、

若き日の自分と重なるように、体を揺らした。

 

懐かしい曲がかかると、二人は自然と手を繋ぎ、

体を寄せ合い、踊り始めた。

昔と同じように、互いの体を求め合うように。

 

しばらくすると、ふたりの距離を近づけるかのように

当時の音楽が流れ始めた。

 

「あの頃と同じだね。」

 

美奈子は、慎吾の耳元でつぶやくと顔を覗き込んだ。

 

「うん。何も変わってない。」

 

慎吾は、美奈子の瞳を見つめながら、そう答えた。

 

一夜の出来事だったけれど、

二人はあの夜の、再び青春を取り戻したような気がした。

愛と記憶を紡ぐ

静かなカフェ。

テーブルの上には、アルバムとデジタルカメラ

新郎の翼は、アルバムをめくりながら、

新婦の澪の笑顔に何度も見入っていた。

二人の出会いは学生時代。

部活で一緒になり、互いの夢を語り合い、

いつしか惹かれあっていた。

 

「澪、このビデオには、僕たちのすべての思い出を詰め込みたいんだ。」

 

翼の言葉に、澪は微笑む。

 

「うん、楽しみ!」

 

二人の希望は、ただ二人の記録を残すことだけではない。

結婚式当日の感動を、家族や友人にも分かち合いたい。

そして、未来の子供たちにも見てもらいたい。

 

ビデオグラファーの山田は、

二人の話をじっくりと聞いた。

二人の出会い、プロポーズの言葉、

そして結婚式への思い。

山田は、二人の心に寄り添い、

オリジナルのシナリオを制作した。

 

結婚式当日。

会場は、たくさんの笑顔で溢れていた。

山田は、二人の姿を、

そして会場のあたたかい雰囲気を、カメラに収めていく。

 

緊張している新郎新婦を、山田は優しく励ます。

「緊張しますよね。でも、今、この瞬間を楽しみましょう。」

 

二人の誓いのキス、感動のメッセージ、

そして、退場のとき。

山田は、二人の後ろ姿を見つめながら、

シャッターを切り続けた。

 

撮影された映像は、膨大な量だった。

山田は、一つ一つの映像を丁寧に見ていき、

二人の物語を紡いでいく。

BGMは、二人の好きな曲。

ナレーションは、二人の言葉。

 

編集作業は、長い道のりだったが、

山田は、二人のために最高の作品を作りたい

という一心で、作業を進めていった。

 

そしていよいよ、完成したビデオの上映。

 

緊張した翼の姿。

その手をギュッと握りしめる澪。

たくさんの笑顔とたくさんの涙。

そして最後の退場のシーン。

エンドロールから数秒後、

ひとつの映像が流れる。

それは二人にとっての思い出の場所。

白い砂浜で、このビデオの為に撮影した姿だった。

 

現場は、二人の笑顔と感動の涙に包まれた。

 

ビデオを見た新郎新婦は、

これまでの道のりを改めて振り返り、

互いの愛を再確認した。

家族や友人たちも、二人の幸せを心から祝福した。

 

結婚式から数年後。

二人のもとには、可愛い子供が生まれていた。

翼は、子供たちに、ウェディングビデオを見せた。

「パパとママの結婚式だよ。」

 

子供たちは、キラキラした目で画面を見つめていた。

「パパカッコいい!」

「ママきれい!」

このビデオは、二人の愛と記憶を、

これからもずっと繋いでいく。

 

結婚式は、人生の一つの章。

ウェディングビデオは、

その章を永遠に記憶に残すための宝物。

Tシャツを作るぞ

この小さな町にあるダンススクール。

そこには、バレエ、ヒップホップ、ジャズなど、

様々なジャンルのダンスを学ぶ子どもたちが集まっていた。

そのスクールは活気あふれるもので、

みんな、それぞれの夢に向かって、一生懸命練習していた。

 

ある日、ダンススクールの先生は、

子どもたちに「オリジナルのTシャツを作るぞ!」と提案した。

 

「えー、自分たちで作るの?」

「どんなデザインにするんだろう?」

「みんなとお揃いのTシャツなんて、楽しみ!」

 

子どもたちは、先生の提案にワクワクしながら、

自分たちのアイデアを出し合った。

 

「好きなダンスポーズを描こう!」

「チームの名前を入れよう!」

「スクールカラーの虹色にしよう!」

 

たくさんの意見が飛び交い、

子どもたちは自分たちだけのオリジナルデザインを考えた。

そして、みんなで協力して、

絵を描いたり、文字を書き込んだりした。

 

数日後、完成したTシャツを着て、

子どもたちは鏡の前でポーズを決めてみたり、

みんなで踊ってみたりして、大喜びだった。

自分たちで作ったTシャツは、特別なものに感じられた。

 

そして、いよいよ発表会の日。

子どもたちは、ステージの上で、

自分たちのオリジナルTシャツを着て、

練習の成果を披露した。

 

観客席からは、

大きな拍手と歓声が沸き起こる。

そして子どもたちは、緊張しながらも、

笑顔で踊りきることができた。

 

発表会が終わった後、子どもたちは先生にこう言った。

 

「先生、オリジナルTシャツを作ってよかったです!」

「みんなで協力して作ったから、もっと頑張ろうって思えました!」

「このTシャツを着て、これからももっと上手くなりたいです!」

 

先生は、子どもたちの言葉に感動した。

自分たちで作ったTシャツは、

子どもたちにとって、単なる服ではなく、

仲間との絆を深め、目標に向かって

頑張るためのモチベーションになったのだった。

 

この経験を通して、子どもたちは、

ダンスの楽しさだけでなく、みんなで協力することの大切さ、

そして、自分たちの力で何かを作り出す喜びを学びました。

 

オリジナルのTシャツは、子どもたちにとって、

小さな仲間たちの証となりました。

 

そして、この経験は、子どもたちの心に、

一生残る宝物になったことでしょう。

民主主義の花

遥は、生徒会で学校改革を進めていた。

 

古い校則の見直しや、

生徒主体のイベント開催など、

様々なアイデアを提案する。

 

しかし保守的な先生達からの反対にぶつかる。

 

「今まで通りでいいだろ」

「先生たちに任せなさい」

「ああ。ダメだ。ダメ」

 

特に、生徒会選挙のあり方については、

先生達が候補者を限定しようとする動きがあった。

 

ある日、歴史好きの純が、

遥に古い歴史の本を見せた。

 

そこには、民主主義がどのようにして生まれ、

どのようにして発展してきたかが書かれていた。

 

純は、「民主主義は決して完成されたものではなく、常に変化し続けていくものだ」と語る。

 

遥は、純の話を聞いて、

自分たちの学校がまさに

民主主義の小さな社会だと気づいた。

 

そして、先生達や生徒たちを巻き込み、

より良い学校を作りたいと決意した。

 

「みんな!私たちの学校を

私たちの手で作り上げませんか!」

 

「民主主義にふさわしい国に成長していくのではなく、

民主主義によって健全な国になるのです」

 

「不当な束縛や抑圧を受けず、

私たちが望む生活を実現しましょう!」

 

遥は、生徒会で演説を行い、

民主主義の重要性について訴えた。

 

最初は、冷ややかな反応しか得られなかったが、

少しずつ賛同する生徒が増えていった。

 

純も、歴史の知識を活かして、

生徒たちに民主主義について語り始めた。

 

すると先生達も、

生徒たちの熱意に心を動かされ、

「まあ。いいんじゃないか。」

「面白そうだな。」と

少しずつ考えを変えていく。

 

そして、生徒会選挙は、

全生徒が自由に立候補できる形で

行われることになった。

 

選挙当日、

生徒たちは熱心に投票を行い、

新しい生徒会長が誕生した。

 

新しい生徒会長は、

遥や純をはじめとする

生徒たちの意見を尊重し、

より一層学校改革を

進めていくことを約束した。

 

学校は、今、生徒たちの力で少しずつ変わっている。

 

民主主義の花が、学校という

小さな社会に咲き始めたのだ。

 

「民主主義は、

ひとりひとりの手で築かれるもの。

私たちが社会を良くするために、

これからも声を上げ続けていきたい」

 

遥と純は今日も学校で声をあげている。

勇気

少年は、夜になると布団の中に顔を埋め、

なかなか眠れなかった。

窓の外から聞こえる風の音や、

壁の模様が、彼の想像力を掻き立て、

様々な形の怪物に見えてしまう。

少年は何度も母親に「怖いから一緒に寝て」と頼んだ。

母親は優しく少年を抱きしめ、

「大丈夫だよ。何も恐れることはないよ。」と囁いてくれた。

 

ゴロゴロゴロ!!

 

ある夏の夜、突然、停電になった。

部屋は真っ暗闇に包まれ、少年はパニックになった。

心臓がドキドキと音を立て、冷や汗が止まらない。

少年は布団に顔をうずめ、目をぎゅっと閉じても、

暗闇という恐怖が彼を埋め尽くす。

 

「お母さん!」

 

少年は大きな声で母親を呼んだが、返事はない。

 

「どうしよう、怖い…」

 

恐怖に震えながら、少年はゆっくりと布団から出た。

真っ暗闇の中で、少年は自分の心臓の音だけが大きく聞こえた。

目を強く閉じ、ゆっくり、ゆっくり、一歩ずつ。

恐る恐る、少年は部屋の隅に手を伸ばした。

 

そこには、おもちゃ箱があり、

触れた感触が、少年を少し安心させた。

少年は深呼吸をし、目をゆっくりと開けた。

 

最初は何も見えなかったが、

しばらくすると、部屋の輪郭がぼんやりと見えてきた。

少年は、おもちゃ箱の場所を頼りに、

少しずつ部屋の中を探索し始めた。

 

最初は恐怖に震えていた少年だったが、

少しずつ暗闇に慣れてきた。

そして少年は、暗闇の中にいる自分を

受け入れることができるようになった。

 

ガチャ。

やっとの思いで、部屋のドアを開ける。

廊下もまた同じように暗闇だった。

 

しかし、もうそこには恐れる彼はいなかった。

確実に一歩ずつ歩を進める。

 

「こうた!大丈夫!?」

 

母親の声がした。

 

「うん!大丈夫!」

 

そして、声のもとへ向かう。

 

「こうた!」

 

母親は少年の腕をつかみ、体を引き寄せる。

 

しばらくして、長い間続いていた停電が復旧する。

 

少年には恐怖は確かにまだ少し残っていたが、

克服できたという達成感で心が満たされていた。

 

「強くなったわね。」

 

母親は少年の頭をなでる。

そして少年は一つのことを学んだ。

 

「勇気を持つ人というのは、

恐怖を感じない人ではなく、

恐怖に打ち勝つことが出来る人のことなんだ。」と。