popoのブログ

超短編(ショートショート)

藻岩山

大学生の頃、私は親友のさとみと札幌旅行に行った。

冬の札幌といえば、雪景色とイルミネーションが美しい。

しかし、私たちはあえて夏の札幌を訪れた。

緑あふれる街並みや、爽やかな風を感じたかったからだ。

 

旅行の最終日、私たちは藻岩山に登ることにした。

藻岩山は札幌市街を一望できる山で、

特に夜景が美しいことで有名だ。

ロープウェイに乗って山頂へ向かう途中、

札幌の街並みが徐々に小さくなっていく。

眼下に広がる景色に、私たちはただただ感動するばかりだった。

 

山頂に到着すると、360度のパノラマが広がっていた。

街の灯りが宝石のようにキラキラと輝いている。

思わず息を呑むほどの美しさだった。

私たちはベンチに座り、しばし景色を眺めた。

 

「本当にきれいだね。」

 

さとみが呟く。

 

「うん。一生忘れられない景色だと思う。」

 

私も同意する。

 

しばらくすると、さとみがそっと私の手を握ってきた。

 

「ねえ、約束しようよ。またここに一緒に来ようって。」

 

さとみの目はキラキラと輝いている。

 

「うん、約束だよ。」

 

私もさとみの手を握り締める。

 

その瞬間、私はさとみを愛していることに気づいた。

夜景の美しさに心を奪われていただけでなく、

さとみと一緒にいたからこそ、

この景色が特別なものに感じられたのだ。

 

私たちは夜が更けるまで、山頂で語り合った。

 

あの時の景色と、さとみとの約束は、

今でも私の心の中に鮮明に残っている。

藻岩山は、私にとって特別な場所。

 

そして約束通り、社会人になった今でも、

私は時々さとみと藻岩山を訪れる。

仕事やプライベートで辛いことがあった時、

この場所を訪れると、心が癒される。

そして、初心に帰るきっかけになる。

 

女同士の私たちにもしっかりと愛は育まれている。

大切な場所と共に・・・。