東京の高層ビル群にそびえ立つ、
日本屈指のIT企業「サイバー・Jr」。
その創業者であり社長である天野は、
類まれなるカリスマ性と営業力で会社を大きくした。
天野には、学生時代からの親友である上田という側近がいた。
上田は、天野の情熱的なアイデアを冷静に判断し、
経営戦略や分析に長け、現実的な形へと具現化する
右腕以上の存在だった。
二人三脚で会社を成長させ、
ついに業界のトップに君臨した天野と上田。
「やったな」「ああ。お前のお陰だ。」
天野は更なる飛躍を目指し、新事業を提案する。
その経営会議のプレゼンは素晴らしいものだった。
出席したもの皆が賛同した。
ただ一人、上田を除いては。
なぜなら今回の提案は天野単独による初めてのものだったからだ。
天野のアイデアをカタチにするのは上田の役目。
それが今回、上田は何も携わっていなかったうえに、知らなかった。
俺は不要なのか?
用済みか?クビにされるのか?
様々な不安が上田を襲っていた。
そんな上田は天野へ憎しみを抱いた。
翌日、不正会計、顧客データの流出、社員へのパワハラなど、
数々の悪事を作りあげる。
その結果、天野は失墜する。
そして新しい社長には上田がついた。
天野は会社からの去り際、
上田と目を合わせるも
首を縦に1度振るだけだった。
上田は社長室のデスクに座って
棚を開けた。
そこには一枚の手紙があった。
上田へ。
学生時代から共にした時間は忘れられない宝物だ。
初めての仕事が終わった日、朝までバカみたいに飲んだよな。
懐かしいなあ。楽しかったなあ。
上田。俺は新しい事業を手掛けようと思う。それは俺の挑戦でもある。
だから俺は営業部に移ろうと思う。
今まで上田に甘えっぱなしだったからな。実際はお前がカタチにしてくれたのが、この会社だ。だから、この会社はお前に任せようと思っている。
もちろん上田が隣にいないのは寂しいし、不安だ。
でもこの会社もデカくなった。
俺の力量では限界だ。上田しか出来ない。
俺の初めてひとりでした決断と、挑戦を応援してくれ。
上田。お前しか信頼できる奴はいないんだ。この会社を頼む。
俺が次の経営会議で話す内容は、
上田へのサプライズだ!
俺の成長は上田にしかわからない。
しっかり判断してくれ!
良かった時は俺の成長を褒めてくれ!
俺が一番喜んで欲しいのは
上田。お前だからな。
この手紙を読む頃は上田社長と
営業部の天野だ。