サラリーマンの彼は、
仕事の激務からミスが多く目立ち、
いつも慌てふためいてばかり。
付いたあだ名は「ポンコツ」
しかし、彼は誰よりも情に深く、
困っている人を放っておけない性格だと周りは知っていた。
ある日、彼は取引先との重要な商談を控えていた。
しかし、当日の朝、資料を忘れてしまったことに気づく。
「どうしよう。」
慌てて自宅に帰ろうとするが、
電車では時間に間に合いそうもない。
そんな彼を見ていた同僚は、
「もぉーう。忘れたのか?」と笑って、
自分の資料を急いでコピーして、彼に渡した。
「ごめんね。ありがとう!」
同僚は彼の仕事ぶりはポンコツだと思っていたが、
彼の優しさにはいつも感銘を受けていた。
「今日は彼女の誕生日なんだろ?」
「僕がやっておくから帰りなよ。」
その日、彼は両親と食事する約束があったのを知ったのは後日のことだった。
「ポンコツだけど、頼りになる奴だからね」と同僚は言う。
「はい。これ。」
「この前、両親が待ってたんだろ?」
「ここの料理美味しいから行ってみな。」
そう言って3人分のレストランの食事券を渡した。
商談はうまくいった。
彼はとても喜び、
同僚と笑顔でオフィスに戻る。
オフィスのドアを開けると、
パーン!パ、パーン!!と
クラッカーの音が鳴り響く。
「おめでとう!」
そう言って彼の肩を上司が叩く。
「やりましたね!おめでとうございます!」
そう言って後輩が握手を求める。
どうして…
「ごめん。俺が先に報告いれちゃった。」
「だって、みんなめちゃくちゃ気にしてたんだよ。」
「一人で残業してたのも知ってる。」
「後輩の資料が途中だと、お前が残って仕上げてただろ。」
「機械の調子が悪いって言ったら、次の日には直ってた。」
「あれはお前が直してくれたんだろ。」
「ありがとう。ポンコツ。」
「僕はすぐテンパっちゃうし、
仕事は遅いし、ミスもする。」
「ほんと、どうしようもないポンコツだ。」
「だけど、だけど、みんなが居るから僕は頑張れる。」
「ありがとう。」
「そんな人だから好きなんです。」
彼は、周りの人々から愛され、支えられながら、
日々成長していくのだった。