popoのブログ

超短編(ショートショート)

ニューヒーロー

俺は学生の頃から引っ込み思案な性格だった。

 

好きな子がいても、想いを伝えることは出来なかった。

でも、それに対して悔しいとかもない。

どうせ俺なんか。だから最初から諦めていた。

 

みんなで野球をした時も、

「俺ピッチャー」「俺ショート」と

声を上げるみんなに対して、

何も言わない俺はベンチだった。

本当はみんなと野球したかった。

でも俺より上手なみんながやる方がいい。

自然とそう思っていた。

 

そんな俺はチャレンジすらしないから、

失敗、挫折もほとんどなかった。

ただただ、一日一日が過ぎていった。

 

地元の食品工場に就職した俺は、

決まった時間に出勤して、ライン作業を行うだけ。

責任感もやる気も出ない。

 

俺の趣味は絵を描くことだった。

特にアニメが好きだった俺は、

自分だけのヒーローを思いのまま描いていた。

それをある日、SNSに投稿してみた。

 

すると驚くことにバズった。

 

「かっこいいじゃん!」「色合いが好き」

「実際に動くの見てみたい」「ニューヒーロー誕生だ」

 

俺の中の何かが変わった。

 

それからというもの俺は絵を描いては投稿し続けた。

そして、それを見たアニメーションの企業から声がかかった。

 

しかし現実は甘くなかった。

「思ったより大したことないな。」

「まだ出来ないのか?」

「素人がちょっと絵がうまいくらいだろ。」

 

俺への声は冷たかった。

ああ。学生の頃のあの感じだ。

そうだよな。俺は何やってもダメなのに。

なんでこんなに熱くなってしまったんだ。

 

その時、後方から声がした。

 

「ニューヒーロー誕生だ」

 

振り返ると、上司がいた。

 

その言葉…。

 

「あれは俺のコメントだ。」

「久しぶりに胸が熱くなったよ。」

「だから君を会社に勧めた。」

 

「挑戦すれば非難もある。」

「だけどそれを乗り越えていくから楽しいんじゃないか。」

「お前はニューヒーローだろ?」

 

俺の中で変わった何かが再び震えた。

 

「はい!がんばります!」

 

「転んだら、また起き上げればいい。」

「何度だって、何度だって、起き上がればいい。」

「そして強くなるんだ。」

 

「自分に負けるなよ!」

 

上司はポンっと俺の背中を叩いた。

 

同時に俺は、

大切な何かを受け取った気がした。