popoのブログ

超短編(ショートショート)

「あの虹はあなたの希望よ。」

 

ママにそう言われたのは

私がまだ幼い頃。

 

いつかきっと

あの色とりどりの虹のように

明るい未来がやってくる。

 

私はそう信じていた。

 

小学2年生の時、

私はパパとキャンプに出かけた。

目の前には綺麗な川があり

私は川に飛びこんだ。

そして、気がつくと

病院のベッドの上だった。

 

隣ではママが泣いていた。

 

「どうしたの?」

 

事実を知ったのは、その時だった。

 

川に入ってすぐ、

流される私をパパが助けてくれた。

自分の命と引き換えに。

 

「ママ…ごめんなさい。」

「ごめんなさい。」

 

それからというもの、

私は、自分と一緒にいる人を

不幸にしてしまう。

 

そう思うようになり、

口数も減っていき、

人を避けるようになっていった。

 

私は高校を卒業してから

スーパーでレジをしていた。

 

ある日、同じバイト先の

男の子に食事に誘われた。

 

人生で初めてのデートだった。

 

私は彼の優しい言葉と笑顔に

恋心を抱くようになった。

 

6回目か7回目のデートの時、

その日は雨が降っていた。

私たちはランチを終えて店を出る。

そして、近くの川沿いを歩いていた。

 

すると立ち止まった彼は

私に「付き合ってほしい。」

そう言ってくれた。

 

でも私の答えは

「ごめんなさい。」だった。

 

私は人を不幸にする女。

 

これ以上、一緒に居てはいけない。

 

「ごめんなさい。私と居ると…

あなたが不幸になるの。」

 

「不幸?不幸になる?」

 

「ふざけるなよ!」

 

私はこんなに怒る彼を初めてみた。

 

「俺にとって何が不幸かわかるか?」

 

「それはお前と一緒にいない人生だ。」

 

私の目からは涙が溢れた。

 

気がつくと雨が止んでいた。

 

そして、空には虹がかかっていた。

「あの虹はあなたの希望よ。」

ママの言葉をふと思い出す。

 

「こんな私でも恋をしていいのかな?」

 

「当然だとも。」

 

そう言って彼は私を

そっと抱きしめた。

 

 

それは人と人を結びつける

特別な架け橋。