popoのブログ

超短編(ショートショート)

許されぬBirthday

今日は、カレンダーの赤い印が示す日ではない。

でも、俺の心は、今日という日を特別な日に塗りつぶしている。

愛する人の誕生日を祝う日。

 

彼女の本当の誕生日は、もう少し後の日。

でも、彼女が家族と過ごす大切なその日を、

俺が横取りするわけにはいかない。

それでも、今日、こうして静かに彼女のことを想う時間は、

俺にとってかけがえのないものだ。

 

窓の外には、街の灯りが煌めいている。

まるで、彼女の笑顔のように温かい。

いつものように彼女の好きなお酒と料理を並べる。

部屋中には甘い香りが漂う。

 

お祝いできる日が今日だというは当たり前だ。

俺は彼女とたくさんの時間を過ごしている気がする。

初めて出会った日のこと、初めてのデートのこと、

そして、俺が彼女に初めて「愛してる」と言った日のこと。

 

あの日、彼女の瞳に映っていたのは、俺だけの俺だった。

その温かい瞳に、俺は何度どれだけ救われたことか。

 

誕生日当日は、俺の心は痛むだろう。

俺たちは、決して一緒にいることはできない。

 

それでも、俺の心の中には、いつも彼女が存在している。

彼女の笑顔、彼女の声、彼女のぬくもり。

それらは、俺にとっての宝物。

 

いつか、この束縛から解放される日が来るかもしれない。

いや。来なくてもいい。

俺はただ、彼女の幸せを願い、遠くから見守っている。

 

今、この時間がずっと続いてほしい。

なんて淡い期待と叶わぬ期待を胸に、

今だけは全て忘れて共に居たい。

 

静かに夜が更けていく。

窓の外の街の灯りは、いつまでも輝いている。

そして、俺の心の中にも、彼女の灯りが永遠に灯り続けるだろう。

 

「お誕生日おめでとう」