popoのブログ

超短編(ショートショート)

祖父の遺品

舞台は現代。

戦争で戦死した祖父の遺品を整理することから物語が始まる。

 

久しぶりに帰った実家。

ずっと使われていない部屋。

「おばあちゃん、もうそろそろ片付けよ」

 

祖父の部屋は今も当時のままだった。

「間違いかもしれない」

「いつか戻ってくるかもしれない」

「帰って来るその日のために」

祖母は現実を受け止めつつも、

どこかでまだ信じられない想いなのだ。

 

私は、ゆっくりと入った祖父の部屋で

古いアルバムを見つけた。

そこには、祖父が笑顔で写っている写真や、

戦地から送られてきた手紙が挟まれていた。

手紙には、戦地の様子や、

家族への深い愛情が綴られていた。

「もうすぐ帰る」

最後の手紙にはそう記されていた。

この言葉が祖母を縛っているのだろう。

 

当時、祖父は平和を望んでいた。

そして、その為に戦うのだと言った。

 

私は今でも、その言葉がわからない。

 

家族、友人、仲間、

どこにいたって、誰にだって、

あるものだと思う。

 

みんな大切にしたい人がいる。

みんな平和を望んでいる。

 

その答えが戦争だなんて、

私には理解できない。

 

そんな想いで祖父の写真を見つめた。

 

次の日、私は小さな丘に一人静かに向かった。

丘の上には、かつて祖父が植えた桜の木が大きく育ち、

満開の時期には辺り一帯をピンク色に染める。

 

私は桜の木の下に座り、

祖父との思い出を懐かしんだ。

幼い頃に祖父に読んでもらった絵本。

一緒に作った凧。そして最後の別れ。

戦争で祖父を失った悲しみは、

年月が経っても私の心に深く刻み込まれていた。

 

その夜、私は満天の星空を見上げながら、祖父に語りかけた。

「おじいちゃん、私は大きくなりました。

きっとどこかで私を見守っていてくれるよね。

おじいちゃんは、本当は戦争を望んでいたわけじゃない。

ただ家族を守り、平和な世の中を願っていただけなんだよね?」

 

私はそっとキャンドルに火を灯す。