popoのブログ

超短編(ショートショート)

化粧水と私

「また一日が終わった…」と、

私は疲れた体をソファに沈めた。

窓の外は、街の灯りが煌めき始めていた。

ふと、鏡に映る自分の顔に目がいく。

昔のようにツヤのある肌ではなく、

乾燥による小じわが目立つ。

 

「もう、こんな年だし…」と、

ため息をついた私。

でも、心のどこかで、

このままじゃいけないという気持ちがあった。

 

そんな時、スマートフォンを開くと、

化粧水の日のキャンペーンが目に入った。

様々な化粧水の広告が流れてくる中、

ある言葉に目が釘付けになった。

 

「あなたの肌は、あなただけの物語を語っている」。

 

その言葉を見て、

私は過去の自分と今の自分を重ね合わせていく。

学生時代、部活の後には

必ず化粧水で肌を整えていたこと。

初めての恋をしたとき、

ドキドキしながら選んだ化粧水のこと。

結婚して子供を産み、バタバタと毎日を送る中で、

いつの間にか自分のケアを後回しにしていたこと。

 

「あの頃の私は、もっと肌のことを大切にしていたのに…」

 

そう思った私は、

久しぶりに化粧水のパックを開けた。

とろみのある化粧水が

肌に馴染んでいくのが心地よく、心が安らぐ。

鏡に映る自分の顔は、

少しだけ潤いを帯びて輝いているように見えた。

 

「ありがとう、過去の私。」

 

過去の自分が教えてくれた肌の大切さを、

これからの自分にも繋いでいこう。

そう決意した私は、何だか心が晴れやかだ。