世界は、核戦争後に暴力が支配した。
それから数年、ジンという救世主のもと
世界は平和を取り戻しつつあった。
荒野を彷徨うジンは、
ひっそりと佇む小さな村に辿り着く。
そこはかつて、宿敵メイオウが支配していた土地だった。
村人たちは、メイオウの残した悪夢に怯えながらも、
なんとか平和な日々を送ろうとしていた。
村の井戸が枯渇し、水を求めてさまようジンは、
村はずれの廃墟を見つける。
中に入ってみると、なんとそこでメイオウと再会する。
しかし、かつての宿敵は、もはや覇王の姿ではなかった。
衰弱し、病に伏せっていたメイオウは、
かつての過ちを悔い、ひっそりと最期を迎えようとしていた。
ジンは、メイオウからかつて愛したアイの消息を聞く。
アイは、この村で暮らしており、
そのお腹には、メイオウの子供を身ごもっているという。
メイオウは、アイに今の自分のことを話せず、苦悩していた。
メイオウと別れたジンは、
ようやく見つけた、村の井戸端で水を飲んでいると、
遠くから女の笑い声が聞こえてきた。
それは、ジンにとって忘れられない、
懐かしい声だった。
心臓が大きく鼓動し、ジンは思わず立ち上がった。
奥の方から現れたのは、見慣れた顔。
成長し、大人の女性になったアイだった。
アイは、ジンの姿を見て、一瞬言葉を失った。
だが、すぐに駆け寄ってジンの腕の中に飛び込んだ。
「ジン…」
アイの瞳には、喜びと悲しみが入り混じっていた。
ジンもまた、アイを抱きしめ、
言葉にならない感情を噛みしめた。
二人は、長い時を経てようやく再会を果たしたのだ。
「アイ、元気だったか?」
「うん、元気だよ。ジンも…」
アイは、ジンの顔を見つめながら、ゆっくりと話し始めた。
メイオウとの間にもうけた子供がいること、
そして、この村で幸せに暮らしていること。
ジンは、アイの言葉に驚きながらも、心の底から安堵した。
夕暮れ時、二人は村の外れの丘に座り、
お互いのことを話し合った。
アイは、ジンがずっと自分を探していたことを知って、
感謝の気持ちと同時に、複雑な思いを抱いた。
ジンもまた、アイの幸せを願いながらも、
心の奥底では、彼女を自分のもとへ
連れて行きたいという気持ちを抱えていた。
「ジン、あなたは私の太陽のような存在。
でも、私はもう、この村を離れることはできない。」
アイの言葉の意味をジンは受け止める。
そしてジンは、アイとその子供の幸せを願い、
静かに村を後にすることを決意する。
別れ際、「村はずれの廃墟を訪れてくれ。」と
ジンは最後の言葉をかけた。
再び荒野を歩きはじめたジンは、自分の宿命と、
そしてアイへの想いを改めて認識する。
ふと見上げると、無数の星が輝いていた。
二つの寄り添う星と、少し離れた一番星が目に入った。