popoのブログ

超短編(ショートショート)

アコーディオンと歌声

古びたアパートの一室。

薄暗い部屋の中、

一台のアコーディオンの音が響いていた。

奏でるのは、長髪をなびかせ、

どこか憂いを帯びた表情の姉の美夏。

その音に合わせて、澄んだ歌声が部屋中に広がる。

歌っているのは、妹の小春。

まだ幼いながらも、その歌声には、

年齢をはるかに超えた深みがあった。

 

二人は、幼い頃から音楽が大好きだった。

母親が遺してくれたアコーディオンを美夏が引き継ぎ、

小春は自然と歌を歌うようになった。

二人は、アパートの狭い部屋で、

自分たちだけの音楽の世界を作り上げていった。

 

しかし、現実は甘くなかった。

生活は苦しく、二人はアルバイトをしながら

音楽の夢を追いかけていた。

それでも、二人は決して諦めなかった。

毎晩、アパートで練習を重ね、

小さなライブハウスに出演し、

自分たちの音楽を届けていった。

 

ある日、二人は大きなオーディションを受けることになる。

緊張しながらステージに上がった二人。

アコーディオンの音と歌声が会場に響き渡る。

観客は、二人の熱演に魅了され、大きな拍手を送った。

 

結果は、見事合格。

メジャーデビューのチャンスが掴まれた。

しかし、喜びも束の間、デビューシングルは

全く売れず、二人は大きな挫折を味わう。

 

「もう、だめかも…」

 

小春は、そう呟いた。

美夏は、妹の肩を抱き、優しく微笑んだ。

 

「大丈夫。私たちには、音楽がある。」

「音楽を諦めることは、自分たちを諦めることと同じだよ」

 

美夏の言葉に、小春は再び力を得た。

二人は、自分たちの音楽を信じて、

活動を続けることを決意する。

 

それから数年後、二人は、

小さなライブハウスから大きな会場へと、

その活躍の場を広げていった。

そして、ついに、武道館での単独ライブを実現させる。

 

満員の武道館。

 

スポットライトを浴びた二人は、深呼吸をして、

アコーディオンの音を奏で、歌い始めた。

 

「この歌は、私たちの歌。そして、あなたの、みんなの歌」

 

小春の歌声は、会場中に響き渡り、観客は一つになった。

 

ライブの最後、二人は深々と頭を下げた。

観客からは割れんばかりの拍手が送られた。

 

舞台裏に戻った二人。互いに抱き合い、涙を流した。

 

「私たちは、やっとここまで来れたね」

 

「うん。これからも、一緒に音楽を奏でていこうね」

 

二つのメロディが一つになり、

新たな物語が始まろうとしていた。