深い森の中に佇む古びた小屋。
その小屋に一人の男が閉じこもっていた。
彼は数日前、森の中で
犬に噛まれてしまい、
狂犬病を発症したらしい。
最初は、ちょっとした
熱と倦怠感だった。
しかし、日ごとに症状は悪化し、
喉が渇き、光が眩しく、
そして、奇妙な幻覚が見え始めた。
狂犬病の恐ろしい症状が、
彼の体を蝕んでいく。
小屋の外からは、
森の動物たちの物音が聞こえる。
風になびく木の葉の音、
遠くで鳴くフクロウの鳴き声。
それらの音が、
彼の不安を掻き立て、
恐怖心を煽る。
日が暮れ、小屋の中は暗闇に包まれた。
男は、壁に寄りかかり、
震えながら息をする。
彼の目は、見開かれたまま、
一点を見つめていた。
すると突然、小屋の外から、
けたたましい犬の遠吠えが聞こえてきた。
その声は、彼の心に突き刺さり、
恐怖は頂点に達する。
彼は、必死に窓の外を覗き込むが、
何も見えない。
しかし、その瞬間、
彼の背中に冷たいものが触れた。
振り返ると、そこには、
真っ赤な目でこちらを見つめる、
一匹の犬の姿があった。
ウゥゥゥルルル
犬は、ゆっくりと男に近づき、
鋭い牙をむき出した。
男は、恐怖のあまり、
声も出せずにただ震えるだけだった。
次の瞬間!犬は、男の首に噛みつき、
彼の意識は遠のいていく。
翌朝、小屋のドアが開き、
朝日が差し込んだ。
小屋の中には、男の血痕と、
一匹の犬が横たわっていた。
犬の目は、死んでもなお、
狂気に満ちていたのだった。