墨の香りが、彼女の青春を彩っていた。
彼女の名は、遥。
高校に入学したときから、書道部に入部し、
筆を握る時間が何よりの至福だった。
最初はただ文字を書くことしかできなかった遥だが、
先輩たちの迫力ある書道パフォーマンスを見て、
その世界に魅了された。
「私も、あの舞台で、自分の想いを文字で表現したい!」
卒業まであとわずかの時、遥は決意した。
書道パフォーマンス部を創設し、自分たちの手で新たな歴史を刻むことを。
部員はわずか数人だったが、皆、書道に対する情熱だけは人一倍だった。
練習は過酷だった。体育館で、時には校庭で、
体力の限界まで墨を磨り、何度も何度も文字を書く。
時には、指にマメができ、手が動かなくなることもあった。
そして、最初はまとまりのないパフォーマンスだったが、
試行錯誤を重ねるうちに、少しずつ形になっていった。
迎えた、初めての発表会。
緊張と興奮が入り混じる中、遥たちはステージに立った。
音楽に合わせて、筆が紙の上を躍動する。
一文字一文字に、自分たちの青春、友情、
そして未来への願いを込めた。
(ありがとう!書道!)
会場からは大きな拍手が沸き起こり、温かい視線が注がれた。
その瞬間、遥は確信した。
書道パフォーマンスは、やっぱり自分にとっての全てだと。
卒業後、遥は大学に進学し、書道サークルに入った。
社会人になっても、書道教室を開き、後輩たちを指導している。
ある日、教え子の小学生が、緊張した面持ちで遥を見上げた。
「先生みたいに、書道で大きな舞台に立ちたいんです!」
その言葉に、遥は自分の若い頃を思い出した。
そして、教え子に語りかける。
「きっとできるよ。書道は、自分自身と向き合うこと。自分の心に正直に、筆を動かせば、素晴らしい作品が生まれる。そして、たくさんの人に感動を与えることができるはず」
遥は、これからも書道を通して、多くの人々に夢と感動を与え続けるだろう。
彼女の青春は、決して終わることのない、永遠の物語なのである。