popoのブログ

超短編(ショートショート)

異国のハンカチーフ

地中海に沈む夕陽が、白い家々を黄金色に染めていた。

私は、ギリシャの小さな島を一人旅していた。

青い空、青い海、どこまでも続く白い道。

その美しい風景の中に、現れたのは一人の女性だった。

 

小さな港町で、私は彼女と出会った。

青いジーンズに、サンダルを履いた彼女の足元には

ハンカチーフが巻かれていた。

 

そして、その彼女の笑顔は、まるで地中海の女神のようだった。

 

市場で新鮮な魚介類を選んでいる彼女の横顔は、

彫刻のように美しかった。

 

鼓動が高鳴る中、私は声をかける勇気を振り絞った。

拙い英語で、今日の市場の様子について尋ねた。

彼女は、明るい笑顔で答えてくれた。

その笑顔は、太陽よりも眩しく、私の心を打ちのめした。

 

その後、私たちは、港の小さなカフェで一緒に夕日を眺めた。

彼女は、この島で生まれ育ったという。

島の歴史や文化について、彼女は私に熱く語ってくれた。

その聡明で優しい話し方に、私はすっかり魅了された。

 

別れ際、彼女はそっと足元のハンカチーフをほどいた。

 

「これは、私の思い出。あなたにも、この島の美しさを覚えていてほしい。」

 

そう言って、彼女は微笑んだ。

 

私は、そのハンカチを宝物のように大切にしている。

青い海と白い雲は、もう一人の私を連れて、

あの小さな島へと連れて行ってくれる。

 

あれから数年が経った。

私は、彼女と再び会うことはなかった。

しかし、あの日の夕焼け、彼女の笑顔は、

私の心に永遠に残り続けるだろう。

 

異国の地での出来事は、まるで夢のようだった。

しかし、その夢は、私の心に深い感動と喜びを残してくれた。

 

ハンカチーフを見るたびに、

私は、あの夏の日の温かい思い出に包まれる。