popoのブログ

超短編(ショートショート)

トイレ掃除の時間

「いやー、またトイレ掃除か…」

 

月曜日の朝、掃除当番の俺はため息をついた。

いつもながらの、憂鬱な掃除の時間。

 

ところが、今日はいつもと様子が違う。

クラスメイトの皆が、掃除用具を持って、

楽しそうにトイレに向かっていた。

 

「何だ、今日はみんなノリノリだな」

 

俺も不思議に思いながら、後を追う。

トイレに入ると、そこには予想外の光景が広がっていた。

皆、歌を歌いながら掃除用具を振り回し、

まるでダンスをしているかのよう。

 

「えー!掃除ってこんなに楽しいの!?」

 

俺は目を丸くした。

いつもは単調でつまらない作業に思えていた掃除が、

今日はまるで寸劇のように感じられた。

 

「ほらほら、一緒に歌おうよ!」

 

クラスの人気者が俺に手を差し伸べる。

照れながらも、俺も一緒に歌いながら掃除を始めた。

 

「このブラシ、めっちゃ綺麗になる!魔法の杖みたい!」

 

「うんうん、このスポンジもすごいよ!」

 

「見て!ここ!すごい真っ白になった!」

 

皆は、トイレの汚れと戦う騎士になったつもりだ。

 

「よし、次はこの便器いくぞ!」

 

クラスのムードメーカーが叫ぶと、皆で一斉に便器を磨く。

 

「やったー、ピカピカになった!」

 

完成したトイレを見て、皆は達成感に満ちた笑顔を見せた。

 

「掃除って、こんなに楽しいんだね!」

 

俺は心からそう思った。

いつもは嫌々やっていた掃除が、

今日はクラスメイトとの協力のもと、楽しい思い出になった。

 

放課後、先生は掃除の様子を見て、目を丸くした。

 

「皆、よくやったね!こんなに楽しそうに掃除をするのは初めて見たよ」

 

先生の言葉に、生徒たちはさらに嬉しそうに笑った。

 

それからというもの、クラスのトイレ掃除は、

皆が楽しみにする時間になった。

 

俺は、自分たちの気持ちひとつで、

トイレ掃除という、憂鬱な時間が

楽しい時間に変わる瞬間を目の当たりにした。

 

その後は掃除を通して、クラスメイトとの絆も深まり、

学校生活がますます楽しくなったのだった。