popoのブログ

超短編(ショートショート)

ホテルの開業

<開業前夜>

 

「ついに明日か…」

 

窓の外には、街の灯りがぼんやりと輝いている。

明日、この町に初めて誕生するホテルの開業を控え、

私はソワソワと落ち着かない気持ちでベッドに横たわっていた。

 

このホテルは、私にとってただ仕事場というだけでなく、

夢を叶えるための舞台だ。

地元の小さな町に生まれ育ち、

いつかこの町をもっと活気づけたいとずっと願っていた。

その想いを形にしたのが、このホテルなのだ。

 

設計段階から携わり、内装一つ一つにこだわり抜いた。

このホテルが、訪れる人々に安らぎと感動を

与えられるような空間にしたいと願っていた。

 

しかし、期待と同時に不安も募る。

果たして、お客様は満足してくれるだろうか?

スタッフ一同、精一杯の準備をしてきたつもりだが、

何か見落としはないだろうか?

 

何度も同じことを考え、眠りにつくのが難しい。

それでも、明日の朝、笑顔のお客様を迎えることを想像すると、

自然と顔がほころぶ。

 

<開業当日>

 

早朝、ホテルに駆けつけると、

すでにスタッフたちが活気あふれる様子で準備を進めていた。

緊張しながらも、皆の笑顔に励まされ、私もやる気満々になった。

 

いよいよオープン。「さあ。やるか」

緊張しながらも、最初のゲストを迎えた。

緊張していたはずが、お客様の笑顔を見ると、自然と笑顔がこぼれた。

 

「このホテル、素敵ですね」

 

お客様からの温かい言葉に、これまでの苦労が報われた気がした。

 

その後も一日を通して、様々な国籍のお客様が訪れた。

言葉は違えど、皆ホテルに満足してくださっている様子。

そんなお客様の笑顔を見るたびに、私は大きな喜びを感じた。

 

一日の終わり>

 

無事に一日を終え、スタッフ全員で集まった。

今日の出来事を振り返りながら、反省点や改善点などを話し合った。

 

「今日は本当に良い一日だった。ありがとう」

 

私の言葉に、皆が大きく頷いた。

 

このホテルは、私にとって単なる仕事場ではなく、家族のような存在だ。

これからも、スタッフ一同、お客様に最高のサービスを提供し、

このホテルを愛してくれる人々で溢れる場所にしたい。

 

「オーナー!」

 

その言葉が帰ろうとした私を引き留めた。

私はその言葉につられるように振り返った。

 

そこにはスタッフ全員が並んでいた。

 

「最高のホテルにしましょう!」

 

スタッフの女性がそう言って、花束をくれた。

と同時に、私の目から涙あふれ出た。

 

明日の朝も、また新たな一日が始まる。