popoのブログ

超短編(ショートショート)

ふとした日

いつものように、起き上がり部屋のドアを開ける。

今日は特に予定もない、穏やかな一日のはじまりだ。

 

リビングに入ると、愛らしい笑顔で迎えてくれる妻の姿があった。

ふとした瞬間に、彼女の頬にできた浅いシワが目に入った。

日々、家事や育児に奔走する妻の姿を思い浮かべ、

感謝の気持ちがあふれてくる。

 

「おはよう。今日は何するの?」

 

妻の問いかけに、特に予定はないと答えると、

彼女は少し寂しそうな表情を見せた。

そんな妻の姿を見て、何か特別なことをしてあげたいと思った。

 

俺は少し散歩に出かけることにした。

しばらく歩くと、ふと道端の花屋さんの

ショーウィンドウに飾られたカーネーションが目に入った。

赤いカーネーションは情熱や愛情を、

ピンクのカーネーションは感謝の気持ちを意味する。

迷わず店に入り、一輪のピンクのカーネーションを選んだ。

 

帰宅すると、妻はリビングで読書をしていた。

そっと彼女の後ろに立ち、カーネーションを手渡す。

「はい、どうぞ」と、照れながら言葉をかける。

 

妻は驚き、そして嬉しそうな表情を見せた。

 

「ありがとう。きれいね」

 

普段、感謝の気持ちを言葉にすることは

照れくさくてなかなかできない。

でも、この一輪のカーネーションには、日頃の感謝の気持ちと、

これからもずっと一緒にいたいという想いが込められている。

 

「ふとした時に思い出してね。いつもありがとう」

 

そう告げると、妻は私の手を握り返してくれた。

彼女の温かい手の感触に、心が満たされる。

 

特別な日ではなく、何でもない日の贈り物。

それは、二人の間の愛情を育む、

小さな魔法のようなものなのかもしれない。