popoのブログ

超短編(ショートショート)

少女の祈り

深い闇に閉ざされた牢獄。

鉄の扉の向こうには、生きた証であるかのように、

一輪の白い花が静かに息づいていた。

その花は、若く美しい少女、

アリアの手によって育てられたものだった。

 

アリアは、この国の支配者によって禁じられた宗教を信仰していた。

その罪により、彼女は牢獄に閉じ込められ、

明日には処刑される運命にあった。

絶望と恐怖に打ちひしがれながらも、

アリアは心の奥底で信仰の光を絶やさなかった。

 

小さな窓から差し込むわずかな光を頼りに、

アリアは刑務所の庭で摘んだ一輪の花を、

獄中に持ち込んだ素焼きの壺に活けた。

荒れ果てた牢獄の中で、

その花はアリアにとって唯一の希望の光だった。

 

毎日、アリアは花に水をやり、そっと語りかけた。

神への祈りを込めて。

 

花は、アリアの愛情に応えるように、少しずつ成長していった。

 

処刑の前夜、アリアは花の前に跪き、最後の祈りを捧げた。

 

「神様、どうか私の祈りを聞いてください。この花が明日、美しく咲きますように。そして、この花が人々に希望を与えることができますように。」

 

翌朝、刑務所の看守たちがアリアを処刑場へと連行しようとしたとき、

彼らは信じられない光景を目の当たりにした。

素焼きの壺から、見事な白い花が咲き誇っていたのだ。

 

その花は、まるでアリアの純粋な心と、

神への信仰の証であるかのように、牢獄中に芳醇な香りを漂わせた。

看守たちは、その美しさに心を打たれ、思わず足を止めた。

 

処刑場に連れて行かれたアリアは、刑場に立つやいなや、

その花を掲げ、大勢の民に向かって語り始めた。

 

「信じることは悪ですか?私は、神を信じています。神は愛と平和を私たちに与えてくれます。どうか、皆も神を、自分を信じてください。」

 

アリアの言葉は、民々の心に響いた。

人々は、アリアの勇気と信仰心に感銘を受け、彼女を庇い始めた。

 

しかし、アリアの処刑は実行された。

 

アリアの物語は、人々に勇気を与え、

禁じられていた宗教への抑圧は徐々に緩和されていった。

 

アリアが育てた花は、人々の心に希望の種を蒔き、

やがて国中に広がっていった。

永遠に人々の心に咲き続けることになったのだった。