popoのブログ

超短編(ショートショート)

ロマンスの神様

結婚して数年が経ち、日常に追われる日々を送るようになったふたり。

互いの愛情は変わっていないはずなのに、どこか心に距離を感じていた。

 

そんなある日、2人は偶然、初めてデートをした場所を訪れる。

そこで、過去の自分たちと重ね合わせ、今の自分たちに足りないものに気づく。

 

「ねえ、ここ覚えてる?」

 

彼女が指さしたのは、街角にある小さなカフェだった。

木製の温もりが感じられる店内は、柔らかな光に包まれていた。

 

「もちろん。初めてデートしたとこだろ」

 

彼は苦笑いを浮かべる。

若かった頃の2人は、この店で何度も時間を忘れて語り合ったものだ。

 

「あの頃は、毎日が新鮮で。どんな些細な事でも、一緒にいれば楽しくて」

 

彼女は窓の外を眺めながら、遠い目をする。

 

「そうだな。お互い、今じゃ考えられないくらい若かったし」

 

彼も昔を懐かしむ。

 

「でも、あの頃の気持ちを、ずっと忘れずにいたいなって」

 

彼女の言葉に、彼はハッとした。

 

「忘れずにいたい?」

 

「うん。私たち、結婚して、子供もできて。幸せだけど、どこか心に余裕がなくなっちゃった気がするんだ。お互いを当たり前だと思ってる自分がいる」

 

彼女の言葉は、彼の心に突き刺さった。

彼は、自分がいかに彼女の存在を当たり前にしていたか、

改めて気づかされた。

 

「ごめん。俺もそうかも」

 

彼は静かに謝った。

 

「でもさ。あの頃の気持ちを、今だって感じてるよ。君といると、いつも安心するし、楽しい。それは今も昔も変わらない。幸せだよ。」

 

彼女は、彼の言葉に顔を紅潮させた。

 

「私もだよ。あなたと結婚して、本当に良かった」

 

2人は、再び互いの手を握り合った。

 

カフェを出ると、夕焼けが広がっていた。

2人は並んで、その美しい景色を眺めた。

 

「いつまでも、ずっと、この気持ちを忘れたくない」

 

彼女がそう言うと、彼は優しく微笑んだ。

 

「うん。俺もだよ」

 

その日から、2人は意識して、お互いのことを大切にするようになった。

小さなサプライズを贈ったり、感謝の言葉を伝えたり。

 

さらに少しずつ、2人の関係は深まっていった。

 

「あの日、あのカフェに来て、本当に良かった」

 

ある夜、ベッドの中で、彼女がそう言った。

 

「ああ、俺も」

 

彼は、彼女を抱きしめ、静かに眠りについた。

 

その夜、彼はこんな歌詞の夢を見た。

 

「神様。感謝しています。」

「いつまでも ずっとこの気持ちを忘れたくない。」

ロマンスの神様。どうもありがとう。」

 

2人の愛はこれからも育まれていく。