ある平凡な日の朝、世界は静かに息を潜めていた。
小鳥のさえずりがいつもより騒がしく感じられた。
少年は窓を開け、深呼吸をした。
爽やかな朝の空気の中に、どこか不穏な香りが混ざっているような気がした。
いつものように朝食を食べ、学校へと向かう。
道中、見慣れない軍用車両が何台も街を疾走していくのを目撃する。
学校に着くと、いつも通りの賑やかさとは
裏腹に、先生の表情はどこか硬かった。
授業中も、生徒たちの集中力は途切れがちで、
いつもなら笑い声が響いていたはずの廊下も、静まりかえっていた。
下校後、少年はいつも通り公園で友達と遊んだ。
しかし、友だちの顔にもどこか不安の色が浮かんでいた。
その夜、家族で夕食を囲んでいた時、
テレビから緊急ニュースが流れ始めた。
「本日未明、国境地帯において、大規模な武力衝突が発生いたしました。政府は国民に対し、冷静な行動を呼びかけています。」
ニュースキャスターの声が、少年の心に突き刺さった。
「戦争…?」
少年は、この言葉の意味をようやく理解した。
平凡な日常が、一瞬にして色を失っていく。
窓の外には、街全体が不気味な静けさに包まれていた。
翌朝、少年は再び窓の外を見上げた。
そこには、もういつもの平和な風景はなかった。
空には戦闘機が飛び交い、遠くに爆音も聞こえてくる。
少年は、この日が、「世界が永遠に変わってしまう日」だと悟った。
“人類史上最悪の戦争”
今ではそう呼ばれる争いがあった。
誰が何のために犠牲を払ったのか。
戦争の始まりがいかに突然で、そして日常を破壊するものか。
平和な日々が当たり前だと思っている私たちにとって、
戦争の恐怖は想像を絶するものであるだろう。
平和の尊さ、戦争の悲惨さ…。
それでも「戦争は起きた。」
私たちはその事実の上で、強く生きていかなければならない。
そして、同じ悲劇を生まないために。