冬の寒さが和らぎ始めた頃、
街はバレンタインの甘い香りに包まれていた。
パティシエの深雪は、新作のチョコレート作りに没頭していた。
「永遠の愛を誓う二人にふさわしい、最高のチョコレートを。」
そんな想いを込めて創作したチョコレートは、
シンプルながらも美しさを放っていた。
そのチョコレートが完成した時、
深雪の脳裏に一人の男性の姿が浮かんだ。
それは、数年前に出会ったことのある、
ミステリアスな魅力を持つ男性、蓮だった。
彼は、深雪のチョコレートに込められた想いを、
きっと理解してくれるだろう。
深雪は蓮に、このチョコレートを見てもらいたい
という衝動に駆られた。
深雪は緊張しながらも蓮に連絡した。
「あ…もしもし。」
「どうしたの?久しぶりだね。」
そして数日後、街で蓮と再会した。
「深雪さん、元気でしたか?」
蓮は、穏やかな笑顔で深雪に話しかけた。
「う、うん。蓮さんこそ、お元気でしたか?」
深雪の心は、ドキドキした想いでいっぱいだった。
その後二人は、カフェでお茶をしながら、
昔話や互いの近況を語り合った。
「あ!こ、これ。」
「ん?なにかな?」
「チョ、チョコレート!バレンタインだから。」
蓮は、深雪の作ったチョコレートに興味を示した。
「キレイなデザインだね。どこかクールで。でもキレイで。」
「そして何より、美味しそうだ。」
「きっと色々な想いから作ったんだね。」
「どうして、このデザインにしたの?」
「う、うん。私もよく覚えてないの。」
「で、でも…これは…」
「あなたと同じ気持ち!っていう想いを込めて…」
「このチョコレートは、まるで僕たちのために作られたようだね。」
蓮は、そのデザインに込められた想いに深く共感した。
そして蓮の言葉に、
深雪の心は張り裂けそうなほど高鳴っていた。
それから二年後、深雪と蓮は結婚式を挙げた。
今では愛の証として、
毎年この時期にふたりでチョコレートを作っている。