ひとりの少年は、幼い頃から病弱な母を深く愛していた。
母の温かい眼差し、優しく語りかける声、
そして時折見せる寂しげな表情。
それらはすべて、彼の心に深く刻み込まれていた。
しかし、母の病は徐々に体を蝕み、
ついに床に伏せる日が訪れる。
彼は、医学生として懸命に治療法を探しましたが、
母の命の灯火は、次第に弱まっていくばかりだった。
ある日、彼は母の枕元で、彼女の手を握りながら、静かに歌を詠んだ。
我が母よ 死にたまひゆく 我が母よ 生まし乳足らひし母よ
母は、かすかに微笑み、彼の手を握り返した。
その時、彼は、母の魂が、肉体から離れ、
永遠の安らぎへと向かうのを感じたのだった。
母の死後、彼は深い悲しみに沈んだ。
しかし、彼は、母の面影を胸に、生きることを決意した。
山いづる 太陽光を 拝みたり をだまきの花 咲きつづきたり
朝あけて 船より鳴れる 太笛の こだまはながし 竝(な)みよろふ山
彼は、故郷の山々を訪れ、母との思い出を胸に、歌を詠み続けた。
彼の歌は、母への愛、そして生と死への深い洞察に満ちていた。
やがて、彼は、精神科医として、多くの患者と向き合うことになる。
彼は、患者たちの苦悩に寄り添い、
彼らの魂を癒すことに、自らの使命を見出した。
あかあかと 一本の道 とほりたり たまきはる我が 命なりけり
彼の歌は、人々の心を打ち、生きることを考えさせた。