popoのブログ

超短編(ショートショート)

母の面影

ひとりの少年は、幼い頃から病弱な母を深く愛していた。

母の温かい眼差し、優しく語りかける声、

そして時折見せる寂しげな表情。

それらはすべて、彼の心に深く刻み込まれていた。

 

しかし、母の病は徐々に体を蝕み、

ついに床に伏せる日が訪れる。

彼は、医学生として懸命に治療法を探しましたが、

母の命の灯火は、次第に弱まっていくばかりだった。

 

ある日、彼は母の枕元で、彼女の手を握りながら、静かに歌を詠んだ。

 

我が母よ 死にたまひゆく 我が母よ 生まし乳足らひし母よ

 

母は、かすかに微笑み、彼の手を握り返した。

その時、彼は、母の魂が、肉体から離れ、

永遠の安らぎへと向かうのを感じたのだった。

 

母の死後、彼は深い悲しみに沈んだ。

しかし、彼は、母の面影を胸に、生きることを決意した。

 

山いづる 太陽光を 拝みたり をだまきの花 咲きつづきたり

 

朝あけて 船より鳴れる 太笛の こだまはながし 竝(な)みよろふ山

 

彼は、故郷の山々を訪れ、母との思い出を胸に、歌を詠み続けた。

彼の歌は、母への愛、そして生と死への深い洞察に満ちていた。

 

やがて、彼は、精神科医として、多くの患者と向き合うことになる。

彼は、患者たちの苦悩に寄り添い、

彼らの魂を癒すことに、自らの使命を見出した。

 

あかあかと 一本の道 とほりたり たまきはる我が 命なりけり

 

彼の歌は、人々の心を打ち、生きることを考えさせた。