popoのブログ

超短編(ショートショート)

ぬくもり

ユウとサクラは、楽しみにしていた雪景色の中で

写真撮影をしていた。

すると突然の吹雪に見舞われる。

視界は悪くなり、体温も奪われていく。

 

「ユウ、寒いよ…」

 

サクラの震える声に、

ユウは自分のマフラーを彼女に巻きつけた。

 

「大丈夫、すぐ近くに温泉旅館があるはずだ。そこまで行こう」

 

二人は協力して、雪道をゆっくりと進んだ。

 

やがて、古い木造の温泉旅館が視界に入った。

 

「助かった…!」

 

二人は安堵の息をつき、旅館の戸を叩いた。

 

「いらっしゃいませ。あら、こんな吹雪の中、よくいらっしゃいましたね」

 

旅館の主人は、温かい笑顔で二人を迎え入れた。

 

「どうぞ、早く中へお入りください。温かいお茶をご用意します」

 

二人は、温かい部屋でホッと一息つき、

吹雪が止むのを待つことにした。

 

二人は夕食後、旅館の温泉に入った。

温かい湯に浸かり、体の芯から温まっていく。

 

「ああ、気持ちいい…」

 

サクラは目を細め、湯気を顔にあてた。

 

本当に助かった。あのままだったら、どうなっていたか…

 

温泉から出た二人は今日のことを振り返った。

「わたし…もう帰れないんじゃないかって諦めかけてた」

「うん。うん。」

「でも、ユウの大丈夫だよって言葉が、わたしを救ってくれた」

「サクラこそ、いつも明るくて、俺を励ましてくれる。」

「ありがとう」

「俺こそ。いつもありがとう」

 

サクラとユウは互いの言葉に胸を打たれた。

 

「今日は、サクラの明るさの裏にある、繊細なところに気づいたよ。写真に対する真剣な想いも…」

 

「ユウも、いつも優しいだけじゃなくて、内に秘めた情熱があるんだね。今日、初めて知ったよ」

 

二人は、普段はなかなか話す機会のない深い話を語り合い、

互いの新たな一面を発見していく。

 

翌朝、吹雪が止み、美しい雪景色が広がっていた。

 

「わあ、きれい…!」

 

サクラは、目の前に広がる銀世界に目を輝かせた。

 

「絶好の撮影日和だね」

 

ユウは、カメラを手に取り、撮影の準備を始めた。

二人は、旅館の主人に感謝を伝え、雪景色の中での撮影に出かけた。

 

「あ、あそこに綺麗な雪の結晶があるよ!」

 

サクラは、雪の中に咲く小さな花の周りにできた雪の結晶を見つけ、ユウに教えた。

 

「本当だ、綺麗だね。撮ってみよう」

 

ユウは、カメラを構え、雪の結晶を撮影した。

 

「次は、あっちの雪だるまを撮ろう!」

 

サクラは、旅館の子供たちが作った雪だるまを見つけ、ユウを連れて行った。

二人は、協力して雪景色の中での撮影を行い、互いの写真に対する情熱を共有し、喜びを分かち合った。

 

そして二人は、自分たちにできる他のことを考えた。

 

「何かお手伝いできることはありますか?」

 

二人は、旅館の主人に尋ねた。

 

「それなら、雪かきをお願いできますか?それと、夕食の準備も手伝っていただけると助かります」

 

旅館の主人は、笑顔で二人に頼んだ。

二人は、雪かきや食事の準備など、協力して作業を行った。

 

「ユウ、雪合戦しよう!」

 

サクラは、雪玉をユウに投げつけた。

 

「はいはい、お手柔らかにお願いします」

 

ユウは、雪玉を避けながら、サクラに笑顔で応じた。

 

共同作業を通じて、二人の間に一体感が生まれ、

旅館の主人や他の宿泊客との交流を通じて、

温かい人間関係を築いていった。

 

二人は旅館の主人や他の宿泊客と一緒に、

雪景色を見ながら温かい飲み物を飲んだ。

 

「この景色、本当に綺麗ですね」

 

サクラは、雪景色を見ながら、しみじみと言った。

 

「ああ、本当に素晴らしい。この景色を見ながら、みんなで温かい飲み物を飲む。最高の時間だ」

 

ユウは、サクラの言葉に同意し、この温かいひとときを心に深く刻み込んだ。

 

二人が旅館を後にする時、

雪が解け始め、春の兆しが見え始めた。

 

「雪が解けてる…!」

 

サクラは、道の脇にできた水たまりを見つけ、驚いた声を上げた。

 

「本当だ。春が近づいてるんだね」

 

ユウは、空を見上げ、太陽の光が雪解けの道を照らしているのを見た。

二人は、この雪解けを、二人の関係の新たな始まりと重ね合わせた。

 

「ユウ、この冬の旅、本当に楽しかったね。ありがとう」

 

サクラは、ユウに感謝の言葉を伝えた。

 

「俺も、サクラと一緒にいられて、本当に幸せだった。これからも、一緒に色々なところへ行こう」

 

ユウは、サクラの手を握った。

 

この旅で撮影した写真は今も二人の宝物として大切に飾られている。