うちの母は遊び人だ。
シングルマザーといえば聞こえがまだいい。
家庭ある男性と不倫して妊娠した。
と言ったらどうだろう。
幼い頃、学校から帰っても母はいない。
帰ってくるのは深夜だ。
起きていると怒られる。
だから俺はいつも寝て待つ。
玄関のガチャンとなる音を待ちわびて。
そして成長した俺が言われたのは
「ひとりで暮らしたら?」
俺は学生時代に家を出た。
家族とは何なのだろう。
いつも俺はうなされる。
勝手な奴だ。
ひどい奴だ。
愛のない奴だ。
でも、それでも母親だ。
俺は今日もうなされる。
大人になり、俺は理解を深めた。
母には母なりの事情があったのだろう。
だってそんな冷たい母はいない。
だってそんなひどい母はいない。
「ねぇ。旅行行きたいの。お金貸して。」
「お金ないよ。」
「だったら、お金借りてきて。」
家族とは何なのだろう。
それでも母なんだ。
「うん。わかったよ。」
俺は今日も笑っている。