popoのブログ

超短編(ショートショート)

4月1日の嘘

春風が心地よい4月1日、エイプリルフールの朝。

高校生の僕は、いつものように通学路を歩いていた。

ふと、公園のベンチに一人座っている女性が目に入った。

彼女は、どこか寂しげな雰囲気を漂わせていた。

 

「おはよう」

 

僕は、思い切って声をかけた。

彼女は、驚いたように顔を上げた。

 

「おはよう…」

 

彼女の名前はマホ。

人見知りで、クラスにもなかなか馴染めずにいると言った。

僕は、そんなマホに親近感を覚え、

他愛もない話をするようになった。

 

「私、実は宇宙人と交信できるんだ」

 

突然、マホがそう切り出した。

僕は、嘘だと気づきつつも、

その突拍子もない発言に興味を惹かれた。

 

「へえ、すごいね。どんな話をするの?」

 

僕が尋ねると、マホは目を輝かせ、

宇宙人の話や、宇宙の不思議な現象について語り始めた。

その話は、どれも現実離れしていて、

まるでSF映画のようだった。

 

「もしかして、それって嘘?」

 

僕がそう尋ねると、マホは少し寂しそうな顔をした。

 

「うん、嘘だよ。でも、私、宇宙のことが本当に好きで…」

 

マホの言葉に、僕は胸が締め付けられるような感覚を覚えた。

彼女は、嘘をついていたのではなく、

自分の好きなことを表現したかっただけなのだ。

 

「僕も、宇宙の話、もっと聞きたいな」

 

僕がそう言うと、マホは嬉しそうに微笑んだ。

それから僕たちは、毎日公園で会って話をするようになった。

マホは、少しずつ心を開いていった。

 

そして、エイプリルフールから1年後。

 

「ねぇ、聞いて!私、天文学部に入ったんだ!」

 

マホは、目を輝かせながら僕に報告した。

彼女は、宇宙への情熱を胸に、夢に向かって歩み始めていた。

 

「すごいじゃないか!おめでとう!」

 

僕は、自分のことのように嬉しかった。

あの時、マホの嘘を受け止めたからこそ、

二人の友情が生まれ、彼女の夢を応援することができたのだ。

 

エイプリルフールは、嘘をついても許される特別な日。

しかし、その嘘が、誰かの心を動かし、

未来を変えることもある。

僕とマホの物語は、エイプリルフールが生んだ、

小さな奇跡の物語である。