私は長い間、過去の恋人である
ハルキの面影を追いかけていた。
優しい笑顔、温かい手のひら、
そして「ユイ」と呼ぶ甘い声。
どれもが私の心に深く刻み込まれ、
新しい恋に進もうとする私の足を重くしていた。
そんな私にも、新しい出会いがあった。
会社の先輩であるリョウだ。
彼はハルキとは正反対のタイプで、
お調子者で明るく、それでもどこか頼れる
ムードメーカーだった。
私は、リョウの優しさ、そして時折見せる
寂しそうな眼差しに、徐々に惹かれていった。
しかし、過去の恋の記憶は、
まるで心の奥底に根付いた蔦のように、私の心を絡め取り、
新しい恋に進むことを躊躇させていた。
リョウと過ごす時間が増えるほど、
ハルキとの思い出が鮮明になり、
罪悪感にも似た感情が私を苦しめた。
そんなある日、私は思い切って美容室の扉を開けた。
鏡に映る長く伸びた髪は、過去の恋の象徴のように思えた。
私は美容師に言った。
「ばっさり切ってください。新しい自分になりたいんです」と。
ハサミが髪を切り落とすたびに、
私の心も軽くなっていくようだった。
洗い終わって鏡の前に立った私は、
そこに別人かと思うほど、
すっきりとした表情の自分がいることに気づいた。
それは、過去の恋に囚われていた自分との決別を意味していた。
美容室を出ると、まるで世界が変わったように感じた。
空はいつもより青く、街行く人々の笑顔も輝いて見えた。
私は足取り軽く、リョウとの待ち合わせ場所に向かった。
リョウは、髪を切った私を見て、
少し驚いた表情をしたが、すぐに笑顔になった。
「似合ってるよ、すごく。前よりもっと綺麗になった」
リョウの言葉に、私は心の奥底から喜びが湧き上がるのを感じた。
その日、私はリョウとたくさん話した。
過去の恋の話、これからのこと、そしてリョウへの気持ち。
話しているうちに、私は気づいた。
過去の恋は、決して消えることのない大切な思い出。
しかし、それは今の私を縛るものではない。
私は過去を乗り越え、新しい未来へと進むことができる。
「リョウ、私、あなたのことが好きです」
私はまっすぐリョウの目を見て言った。
リョウは少し驚いた後、優しく微笑んだ。
「俺も、ユイのことが好きだよ」
新しい髪型、新しい恋、そして新しい自分。
私は、過去の恋を胸に抱きながら、
リョウと共に新しい未来を歩んでいくことを決意した。