popoのブログ

超短編(ショートショート)

一球の想い

僕は、高校入学したものの、特にやりたいこともなく、

日々をなんとなく過ごしていました。

そんな時、友人に誘われて卓球部の練習を見学に行った。

そこで、初めて見る卓球のスピード感、

そして先輩たちの真剣な眼差しに心を奪われた。

 

「なんか、面白そう…」

 

そう思った僕は、軽い気持ちで卓球部に入部することを決めた。

 

しかし、いざ始めてみると、

卓球は想像以上に奥が深く、なかなか上達しない。

基礎練習の繰り返し、フットワーク、多球練習...。

初めて握るラケットは手に馴染まず、

ボールは思うように飛ばない。

周りの部員たちは、軽々とラリーを続け、

鋭いスマッシュを放っていた。

その光景を目の当たりにするたび、僕は自分の不器用さを痛感した。

 

「なんで、こんなに上手くできないんだ...」

 

練習後、疲れ果てて帰宅する電車の中で、何度もそう呟いた。

 

そんな時、一人の先輩に出会った。

先輩は、かつて全国大会を目指していたものの、

高校に入り、怪我で夢を諦めた過去を持っていた。

それでも、先輩は卓球への情熱を失わず、

後輩たちの指導に力を注いでいました。

 

「さあ。やってみよう!」

先輩は僕に熱心に指導してくれた。

 

しかし、なかなか上達しない僕は

「俺には才能がないんだ...」そう思った。

自分だけが取り残されているような孤独感。

部室の隅で一人うずくまり、悔しさと情けなさで涙が溢れた。

 

「卓球を楽しもうよ!」

顔を上げると、笑顔の先輩がいた。

 

「一緒にやろう!」

 

その時、「もっと、早く上手くなりたい...」

そう思う僕がいた。

 

先輩は僕の弱点を徹底的に分析し、

克服するための練習メニューを作成してくれた。

フォームの修正、フットワークの改善、ボールの捉え方、

イメージトレーニングやメンタルトレーニング、

 

僕は卓球だけでなく、人間としての成長を実感した。

 

しかし、その喜びもつかの間、

僕は先輩が病に倒れたことを知った。

 

病院に駆けつけた僕に、先輩はこう言った。

 

「お前なら全国でも通用する。俺の分まで、夢を叶えてくれ」

 

先輩の言葉に、僕は涙した。

 

あの時の気持ちは今でもはっきり覚えている。

 

(今度は僕が先輩にチカラを与えるんだ!)

 

その想いを一心に無我夢中で取り組んだ。

 

「先輩、見ていてください。僕は、あなたの夢を叶えます」

 

「ゲーム、スタート!」

白い球が高く上がる。

僕はそれに想いの全てをぶち込んだ!