お風呂から上がり、火照った体に
そっと触れる夜風が心地いい。
脱衣所の鏡に映る自分は、湯気でほんのり赤みを帯びて、
どこか力が抜けたような表情をしている。
ああ、極楽、極楽。
心の中でそう呟きながら、冷蔵庫へと足を運ぶ。
今日の私のささやかなご褒美。
それは、冷え冷えのコーヒー牛乳だ。
取っ手をつかみ、ずっしりとした
重みを感じながら扉を開ける。
並んだ牛乳パックやヨーグルトの奥に、
お目当てのそれは静かに佇んでいた。
淡いコーヒー色と白のコントラストが、なんだか優しげに見える。
一本取り出し、手のひらでその冷たさを確かめる。
ああ、待ち遠しい。
居間へ戻り、テーブルにコーヒー牛乳を置く。
湯上がりのほてりと、これから味わう冷たさのコントラストが、
すでに心地よい予感となって胸に広がる。
深呼吸をひとつ。
銀色の蓋に指をかけ、ゆっくりと剥がしていく。
プシュッという小さな音とともに、
甘く香ばしいコーヒーの匂いがふわりと漂ってきた。
この瞬間がたまらない。
グラスにゆっくりと注がれるコーヒー牛乳。
淡い茶色が渦を巻きながら、次第に濃い色へと変わっていく。
底の方から立ち上る冷気が、グラスの表面をうっすらと曇らせた。
さあ、いよいよだ。
グラスを手に取り、一口、ゆっくりと味わう。
ひんやりとした感触が喉を通り過ぎ、
甘さとほろ苦さが口いっぱいに広がる。
ああ、この優しい甘さが、疲れた体にじんわりと染み渡るようだ。
目を閉じると、お風呂の温かさとコーヒー牛乳の冷たさが、
体の中で心地よく混ざり合っていくのを感じる。
一日の疲れが、この甘さとともにゆっくりと溶けていくようだ。
二口、三口と飲み進めるうちに、
心も体もふっと軽くなっていく。
さっきまでの疲労感はどこへやら、
代わりにじんわりとした幸福感が胸を満たしていく。
窓の外では、夜の静けさが辺りを包んでいる。
時折聞こえる虫の声が、 穏やかな雰囲気をさらに深めてくれる。
温かいお風呂と冷たいコーヒー牛乳。
ただそれだけのことが、
こんなにも私を穏やかな気持ちにしてくれるなんて。
飲み終わったグラスをテーブルに置くと、
体はすっかりクールダウンしている。
心の中には、じんわりとした温かさと、ささやかな満足感が残った。
明日もまた、頑張ろう。
そんな風に、そっと背中をそっと
押してくれるような、優しい夜のコーヒー牛乳。
それは、私にとって何よりも
さわやかな、一日の終わりのご褒美なのだ。