popoのブログ

超短編(ショートショート)

ダンス

それは、ある晴れた日の午後、公園の片隅で起こった、

まるで魔法のような出来事でした。

イヤホンから流れるアップテンポな音楽に体を揺らし、

一人の少年が夢中で踊っていました。

彼の動きはまだぎこちないけれど、

その表情は喜びと情熱に満ち溢れていました。

ステップを踏むたびに、彼の周りの空気も

キラキラと輝いているようでした。

すると、一人の女性が

少年の踊りを見て、ふと足を止めました。

彼女は優雅な手の動きと、流れるようなステップで、

まるで風のような踊りを踊り始めました。

それは、少年が今まで見たことのない、

情熱的なフラメンコでした。

少年の瞳は釘付けになりました。

力強く床を踏み鳴らす音、カスタネットのリズム、

そして女性の情熱的なまなざしに、彼は息をのみました。

すると、どこからともなく、

陽気な音楽が聞こえてきました。

今度は、民族衣装を身につけた男性たちが現れ、

リズミカルな足踏みと、楽しそうな掛け声とともに、

賑やかなアイリッシュダンスを踊り始めたのです。

彼らのステップは軽快で、見ているだけで心が弾みました。

さらに、鮮やかな衣装をまとった女性たちが現れ、

ゆっくりとした旋律に合わせて、

優雅で美しいインド舞踊を披露しました。

彼女たちの繊細な指先の動きや、物語を語るような表情に、

人々は静かに見入っていました。

気がつけば、公園の一角は、

世界各国の様々なダンスを踊る人々で溢れかえっていました。

力強いアフリカンダンス、情熱的なサルサ、洗練されたバレエ…

言葉は通じなくても、音楽とダンスを通して、

彼らの心は一つになっているようでした。

最初に一人で踊っていた少年は、目を輝かせながら、

様々なダンスに見入っていました。

そして、勇気を出して、見よう見まねでステップを踏み出してみると、

周りのダンサーたちは笑顔で彼を迎え入れ、一緒に踊り始めたのです。

夕焼け空の下、様々な国の音楽が混ざり合い、

色とりどりの衣装が舞う光景は、まさに夢のようでした。

最初は一人ぼっちだった少年を中心に、国境も文化も超えて、

ダンスという共通の言葉で心が通じ合った、感動的な瞬間でした。

その日、少年は知りました。

ダンスは、言葉以上に心を伝え、

人と人を繋ぐ素晴らしい力を持っているのだと。

そして、あの時、勇気を出して踊り続けた自分を、

彼はいつまでも誇りに思うことでしょう。

公園の片隅で生まれた、小さな奇跡の物語は、

人々の心に温かい光を灯し続けたのです。