朝日が障子をじんわりとオレンジ色に染める頃、
ミノルは目を覚ました。
まだ少し眠たい目をこすりながら、布団の中で小さく伸びをする。
台所からは、お母さんの優しい鼻歌と、お味噌汁の良い香りが漂ってきた。
ミノルにとって、朝の楽しみは何と言ってもお茶漬けだ。
昨日の夜に残ったほかほかのご飯に、
カリカリの焼き海苔をちぎって乗せ、梅干しを一つ。
急須から注がれる熱いお茶の音を聞いているだけで…
お腹がぐうっと鳴る。
トントン、とお母さんが梅干しを叩く優しい音。
湯呑みが置かれる小さな音。
それらがミノルの眠気をゆっくりと追い払っていく。
「ミノル、おはよう。お茶漬け、できたわよ」
お母さんの声に、ミノルは勢いよく布団を跳ね起きた。
パジャマのまま台所へ向かうと、湯気を立てるお茶漬けが、
お母さんの笑顔と一緒にそこにあった。
「いただきます!」
ミノルは元気よく言って、お茶碗を両手で持ち上げた。
熱いお茶が染み込んだご飯は、ふっくらとしていて優しい味わいだ。
海苔の香ばしさ、梅干しの酸っぱさが、食欲をさらにそそる。
ハフハフと音を立てながら、ミノルはお茶漬けを夢中で食べる。
時折、お母さんが作ってくれた卵焼きや、香の物を箸でつまむ。
静かな朝の食卓には、お茶漬けをすする音だけが響いていた。
窓の外では、雀たちがチュンチュンと鳴いている。
新しい一日が、ゆっくりと始まっている。
温かいお茶漬けがお腹を満たし、
ミノルの心もまた、穏やかな喜びに満たされていた。
食べ終わったお茶碗を流しに運び、
「ごちそうさま」と伝えると、
お母さんが優しく微笑んだ。
「今日も、良い一日になりますように」
ミノルはランドセルを背負い、玄関へと向かう。
朝日が眩しい。
お茶漬けの温かさを胸に、元気いっぱいに家を飛び出した。