popoのブログ

超短編(ショートショート)

二人の夢

メキシコシティ近郊の貧しい地区で育った若きボクサー。

彼は幼い頃から、同じようにボクシングを夢見る

一人の親友といつも一緒にいた。

彼らは互いに励まし合い、切磋琢磨しながら、

いつか二人で世界チャンピオンになることを夢見ていた。

 

しかし、ある日、悲劇が彼らを襲う。

親友が交通事故に遭い、若くして命を落としてしまったのだ。

彼は大きな悲しみに暮れた。

同時に、親友が生前よく語っていた言葉を鮮明に思い出した。

 

「いつか一緒に世界チャンピオンになろう」

 

「それが俺の夢だ!」

 

親友の死を乗り越え、親友の夢を自分の夢として生きる

彼はそう決意した。

彼はこれまで以上に練習に打ち込み、

亡き友との約束を果たすために、どんな困難にも立ち向かった。

日々のトレーニングは厳しく、

時には心が折れそうになることもあったが、

その度に親友の笑顔を思い出し、

彼は再び立ち上がり、拳を握り続けたのだ。

 

そして、数年の月日が流れ、

ついに彼は世界タイトルマッチの舞台にたった。

試合当日、彼はいつも以上に集中し、

研ぎ澄まされた動きで対戦相手を圧倒した。

激しい攻防の末、ついに彼は勝利を掴み、

世界チャンピオンのベルトを腰に巻いたのだ。

 

その瞬間、会場は歓喜の渦に包まれましたが、

彼はリングの中央で静かに天を仰いだ。

彼の目には熱い涙が溢れ、唇はかすかに震えていた。

 

彼は心の中で、亡き親友に感謝の言葉を送った。

「見ていてくれたか?俺はついにやったよ。お前との夢を果たせたんだ」と。

 

試合後のインタビューで、

彼は亡き親友との約束について語った。

 

「ここまで来るには、本当に多くの困難がありました。

支えてくれた家族、トレーナー、そして何よりも、

いつも僕を励ましてくれたあいつに感謝したいです。

あいつはいつも、『お前なら必ずできる』と言ってくれました。

その言葉が、僕の心の支えでした。

この勝利は、僕一人のものではありません。

あいつと一緒に掴んだ、二人の夢なんです。」

 

彼の言葉は多くの人々の胸に深く突き刺さり、

会場全体が感動的な雰囲気に包まれた。

彼の勝利は、単なるボクサーの成功物語ではなく、

友情の深さ、失われた者への想い、そして・・・

夢を諦めずに追い続けることの尊さを象徴する出来事として、

人々の心に長く刻まれることになったのだった。