popoのブログ

超短編(ショートショート)

夢が生まれる場所

息子と私は、毎年恒例の自動車レース大会を

見るために興奮しながら車を走らせていた。

私にとってそれは、ただの日曜日のレジャーだが、

息子にとっては、夢が生まれる場所なのだ。

 

「父さん、いつか僕もあのコースを走るんだ!」

と以前、息子は目を輝かせながら言った。

 

「優勝して、トロフィーを掲げるんだ。そしたら、父さんを世界一周旅行に連れて行ってあげるよ!」

 

私は息子の熱意に笑顔を見せた。

彼はまるで、もうすでにレーシングスーツを着て、

スタートラインに立っているかのように、

細部までレースの様子を語った。

 

エンジンの轟音、タイヤがアスファルトを掴む匂い、

そして観客席を埋め尽くす人々の地鳴りのような歓声。

彼の中では、すべてが鮮明に描かれているようだった。

 

今日、再びコースが近づくにつれて、

アドレナリンが湧き上がってくるのを感じた。

 

カラフルな車が信じられないようなスピードで

カーブを曲がり、見る者の目を奪う。

息子は身を乗り出し、食い入るようにレースを追った。

彼にとって、これは単なるエンターテイメントではない。

それは、彼自身の未来への道標なのだ。

 

私たちは席に着き、本番のレースが始まるのを待った。

 

私は息子の肩を抱き、彼がこの瞬間に抱いている

喜びと、未来への希望を感じ取った。

それは、彼がプロのレーサーになるかどうかは問題ではない。

大切なのは、彼が情熱を傾けられるものを見つけ、

それに向かって努力することだ。

 

彼の夢は、まだ始まったばかりだ。

そして、私は、その夢を追いかける彼を、

これからもずっと応援し続けるだろう。