popoのブログ

超短編(ショートショート)

つぐない

3月2日

娘の腕に小さな青あざを見つけた。

転んだと言っていたけれど、明らかに不自然だった。

 

5月12日

顔にまで傷ができていた。

保育園にどう説明すればいいのか、頭が真っ白になった。

 

6月4日

夜中に娘のすすり泣く声が聞こえるようになった。

声をかけても、ただ震えるばかりだった。

 

6月5日

夫に抗議しようとしたけれど、

怒鳴られて何も言えなかった。

自分が情けない。

 

9月23日

大好きだったお絵描きもしなくなった。

ただじっと座っている姿を見るたびに、胸が締め付けられる。

 

11月17日

こんな母親で本当にごめんなさい。

苦しみを止めてあげられない自分を許せない。

 

私は、この日記があなたの目に触れる日が来ないことを願っていました。

しかし、それ以上に、二度とあの日々を繰り返さないために、

そしてあなたに、私がどれほど深く後悔しているかを伝えるために、

ペンを取ることを決意しました。

 

あの日々、あなたの父親からの虐待に苦しむあなたを、私は救えませんでした。

見て見ぬふりをしたわけではありません。

ただ、どうすることもできない無力感に苛まれ、

あなたを守る一歩を踏み出せなかった。

その弱さが、どれほどあなたを傷つけたか、

考えるたびに胸が締め付けられます。

 

あなたの小さな体には、常に傷があった。

心には、癒えない深い傷が刻まれていったことでしょう。

夜中に聞こえてくるあなたのすすり泣き、怯えたような瞳、

そして私を見つめるその視線が、私を責め続けています。

私は母親失格でした。

 

父親の暴力が、あなただけでなく、

私自身の心も蝕んでいきました。

しかし、そのことを言い訳にはできません。

あなたの苦痛を目の当たりにしながら、

私は何もできなかった。

その事実から目を背けることは、もうできません。

 

この日記は、私の罪の告白です。

そして、二度とこのような過ちを繰り返さないという、

私自身の誓いでもあります。

あなたに謝罪の言葉を述べる資格などないことは分かっています。

しかし、それでも伝えたい。

 

本当にごめんなさい。

 

あなたの笑顔が、日ごとに消えていくのを見るのは、

私にとって耐え難い苦痛でした。

それでも、私はあなたを抱きしめることさえ、できていなかった。

なぜ、もっと早くあなたを連れてあの家を出なかったのか。

なぜ、もっと早く助けを求めなかったのか。

後悔の念は尽きません。

 

この記憶と記録を、私は決して色褪せさせてはなりません。

これは、私自身の戒めであり、そしていつか、

あなたに、私の謝罪が届くことを願う、最後の望みです。

 

今は、ただあなたの幸せを祈るばかりです。

もし、この日記があなたの手元に届くことがあれば、どうか知ってください。

あなたの母親は、あなたを愛していました。

そして、あなたの苦痛を深く後悔し、

一生をかけて償いをしようとしていました。

 

未来のあなたへ。

どうか、幸せになってください。

あなたの人生が、光に満ちたものでありますように。

 

あなたの母より