popoのブログ

超短編(ショートショート)

スーパーヒーロー警察官

夜の横浜、桜木町の街は、いつもよりざわついていた。

パトカーのサイレンが鳴り響き、高層ビル群の間に不穏な影が蠢く。

その只中にいたのは、一人の若き警察官。

 

僕の胸には、幼い頃からの憧れが刻まれた警察官のバッジが光っている。

しかし、今日はただの警察官ではない。

僕の制服の下には、まばゆい光を放つ最新鋭の強化スーツが隠されていた。

そう、僕は、スーパーヒーロー警察官なのだ!

 

「宝石店で強盗発生! 犯人は高速で逃走中だ!」

 

無線から緊迫した声が響く。

僕は迷うことなく、路地裏に身を隠すと、

一瞬で強化スーツを起動させた。

全身を覆う漆黒のスーツは、僕の筋肉を増幅させ、

眼窩からはターゲットを追跡するレーザー光が放たれる。

 

「了解!現場へ急行します!」

 

僕はコンクリートの壁を蹴り、

驚異的な跳躍力でビルの屋上へ飛び上がった。

闇夜を切り裂くように、街を高速で駆け抜ける。

まるで風になったかのように、あっという間に現場へと向かった。

 

現場に到着すると、改造されたスポーツカーが

猛スピードで逃走していくのが見えた。

助手席からは、自動小銃を構えた男が窓から身を乗り出している。

 

「くそっ!」

 

僕は舌打ちし、道路に飛び降りた。

強化スーツのブーツが地面を叩き、アスファルトにひびが入る。

僕は車を追いかけ、あっという間にそのスピードに追いついた。

 

慌てた犯人は、赤レンガ倉庫へと逃げ込んだ。

夜の赤レンガ倉庫は、逃走犯にとって格好の隠れ場所となる。

しかし、僕の目は、闇の中でも犯人の熱源を捉えていた。

 

「逃がさない!」

 

僕は強化スーツの能力を最大限に引き出し、

猛スピードで木々の間を縫うように駆け抜けた。

次の瞬間、銃を持った男たちが僕に向かって発砲してきた。

 

「甘い!」

 

僕は銃弾を華麗に避けながら、

強化スーツに内蔵されたスタンロッドを起動させた。

電光石火の速さで犯人たちに肉薄し、次々と無力化していく。

僕の動きは、人間離れしたものだった。

 

しかし、その中には、僕も知る宿敵の姿があった。

国際的なテロ組織の一員であり、

これまでにも何度も僕の前に立ちはだかってきた男、ヴァルカンだ。

 

「まさか、お前がここにいるとはな、ヴァルカン!」

 

僕の声に、ヴァルカンは不敵な笑みを浮かべた。

彼の腕には、金属の籠手が装着されており、

そこからは灼熱の炎が噴き出している。

 

「お前もまた邪魔をしに来たか。だが、今日でお前も終わりだ!」

 

ヴァルカンは炎を放ちながら、僕に襲いかかった。

僕は強化スーツのバリアを展開し、炎を防ぐ。

両者の激しい攻防が、山下公園の夜空を彩った。

炎とバリアが衝突する度に、閃光が走り、爆音が響き渡る。

 

僕はヴァルカンの攻撃をいなしながら、反撃の機会を伺う。

そして、ついにその時が来た。

ヴァルカンが一瞬の隙を見せたその時、

僕は全速力でヴァルカンに突進した。

強化スーツの拳が、ヴァルカンの胸部に叩き込まれる。

 

「終わりだ、ヴァルカン!」

 

強烈な一撃がヴァルカンを吹き飛ばし、彼は噴水の池に沈んだ。

警察官たちが駆けつけ、ヴァルカンと残りの犯人たちを確保する。

 

夜が明け始め、横浜の空に朝焼けが広がる。

僕は強化スーツを解除し、いつもの警察官の制服に戻っていた。

顔には疲労が見えるものの、達成感に満ちた笑みが浮かんでいた。

 

「ご苦労様でした、巡査。」

 

上司の声に、僕は敬礼した。

 

僕は、横浜の街を守る一人の警察官として、

今日もまた、静かに任務を全うする。

しかし、その胸には、誰にも知られることのない

スーパーヒーロー警察官としての誇りと使命感が、

確かに息づいていた。