popoのブログ

超短編(ショートショート)

愛の絆

昔々、ある小さな町に、80歳になるヒデさんと、

78歳になるハナさんの老夫婦が暮らしていました。

二人は長年連れ添い、その関係は町の人々から

「理想の夫婦」と称されるほどでした。

 

毎年6月19日ロマンスの日が近づくと、

ハナさんはヒデさんに

「今年も、あの場所に行けるかしら?」と尋ねます。

ヒデさんはいつも優しく微笑み、

「もちろんさ、ハナ。君と一緒に行ける」と答えるのでした。

 

二人の「あの場所」とは、

町から少し離れた丘の上にある、小さな花畑でした。

そこは、二人が初めて出会った場所でもあり、

ヒデさんがハナさんにプロポーズした場所でもありました。

しかし、ハナさんは足が弱り、

丘の上の花畑まで歩いて行くのは年々難しくなっていました。

 

今年のロマンスの日も、

ハナさんは不安げにヒデさんを見つめました。

ヒデさんは、何も言わずハナさんの手を握り、

そっと立ち上がりました。

 

そして、家の裏にある古い物置から、

一台の車椅子を引っ張り出してきたのです。

それは、ずっと前に「いつか使うかもしれないから」と

ヒデさんが密かに用意していたものでした。

 

ヒデさんは、ハナさんを車椅子に乗せると、

ゆっくりと丘の上の花畑へと向かいました。

ハナさんは、ヒデさんの顔を見上げ、

目にいっぱいの涙を浮かべていました。

 

道中、ヒデさんは、二人の思い出話を楽しそうに語り、

ハナさんは、その声に耳を傾けながら、

昔の美しい情景を思い浮かべていました。

 

ようやく花畑に到着すると、

そこは満開の美しい花々で彩られていました。

ヒデさんは車椅子を止め、ハナさんの隣に座ると、

再び、優しく手を握りました。

 

「ハナ、覚えてるかい?ここで君にプロポーズした時、君は最高の笑顔で頷いてくれたね。あれから何十年も経ったけれど、君の笑顔はあの頃と何も変わらないよ。」

 

ハナさんは、ヒデさんの言葉に

涙をこぼしながら、震える声で

「ありがとう。こんなにも幸せにしてくれて…」と答えました。

 

その日、二人は満開の花々に囲まれ、

まるで初めて出会った日のように、

お互いの存在を深く確かめ合いました。

 

二人の変わらぬ愛の絆。

 

ロマンスの日に、大切な人と

「当たり前の日常」の中に隠された

「非日常的なトキメキ」を見つけることができれば、

きっと二人の絆はさらに深まるでしょう。

 

この物語が、あなたのロマンスの日を

彩るきっかけになれば幸いです。

 

今年のロマンスの日は、

あなたにとってどんな一日になりそうですか?