popoのブログ

超短編(ショートショート)

相対性理論

晴れた日の午後、

若き物理学徒のアルベルトは、大学の講義室でひとり、

アインシュタイン相対性理論について頭を抱えていました。

 

「時間は伸び縮みする? そんな馬鹿な…」

 

彼は理論を体感しようと、

まずは簡単な実験から始めることにしました。

台所へ行き、やかんでお湯を沸かし、

小さなストーブの上に手をかざします。

 

「うわあああああ! 熱いっ!」

 

たったの1分。

しかし、彼にとっては永遠に等しい拷問でした。

「まさか、こんなにも時間が長く感じるなんて…」

彼は汗だくになりながら、

その身をもって時間の相対性を実感したのです。

 

次に、アルベルトは別の実験を試みることにしました。

彼は近所のカフェへ行き、窓際の席に座りました。

そして、そこに偶然座っていた、

まさに絵に描いたような美しい女性に目を奪われました。

彼女は優雅に紅茶を飲みながら、本を読んでいます。

 

「よし、これが次の実験だ」と、

アルベルトは心の中で呟きました。

 

彼は彼女の様子をそれとなく眺めながら、

時間を計測し始めました。

彼女の髪が風になびくのを見るたび、

彼女が微笑むたび、彼の心臓は高鳴ります。

気がつけば、どれほどの時間が経ったでしょう?

 彼は意を決して、時計を見ました。

 

「ええっ?! もう1時間も経っていたのか?」

「まるで1分くらいにしか感じなかったぞ!」

 

アルベルトは驚きに目を見開きました。

ストーブの1分が1時間のように感じられたのに対し、

この美しい女性と過ごした1時間は、

まるで瞬きする間のようでした。

 

彼は静かに席を立ち、会計を済ませながら、

心の中で深く頷きました。

 

「なるほど、これが相対性か。時間の流れは、熱いストーブの上では無限に長く感じられ、可愛い女性と一緒なら限りなく短くなる…」

 

その日以来、

アルベルトは相対性理論の虜となり、

彼の研究は飛躍的に進みました。

そして、彼はいつも心の中でつぶやくのでした。

 

「ああ、もしあの時、もう少し勇気を出して、彼女に話しかけていれば…ひょっとしたら、あの1分が、本当の無限に感じられたかもしれないのに!」

 

相対性理論は、私たちの感情や状況によって、

時間の感じ方がいかに変わるかを示してくれる、

なんとも人間らしい理論なのかもしれませんね。