popoのブログ

超短編(ショートショート)

心の声と言葉のちから

木漏れ日が降り注ぐ公園。

少女は、ブランコに揺られながら空を見上げていた。

彼女の心の中には、いつも小さな声が響いていた。

 

「もっと大きな声で歌いたい!」

 

「もっと自由に描きたい!」

 

「もっと遊びたい!」

 

「もっともっと楽しみたい!」

 

しかし、周りの目を気にして、

その声を言葉にすることはできなかった。

 

「恥ずかしい、、、誰もわかってくれないかもしれない、、、」

 

「嫌われるかもしれない、、、」

 

そんな思いが、彼女の心を塞いでいた。

 

次の日、少女は公園で絵を描いていた。

そこへ、一人の老人が近づいてきた。

 

「あなた、絵が上手だね。ほかに何か描きたいものがあるの?」

 

老人の優しい声に、少女はそっと心を開いた。

 

「本当はもっと自由に描きたいんだけど、、、」

 

「動物が好きなんだけど、、、架空の動物が好きで、、、」

 

「でも、、、気持ち悪いって、、、思われるかなって、、、」

 

恥ずかしそうに呟くと、老人は微笑んだ。

 

「心の声に耳を傾けなさい。それが、あなたを導く光になるんだよ。」

 

老人の言葉に背中を押され、少女は自分の思いを絵にぶつけた。

 

真っ白なキャンバスに、色とりどりの羽を持った鳥。

空高く飛び跳ねる鳥。そして輝く太陽。

 

少女の絵は、公園を訪れる人々の心を魅了した。

子どもたちは目を輝かせ、大人たちは懐かしそうに微笑んだ。

 

「なんて素敵な絵なんだろう!」

 

「私もこんな風に描けたらいいな!」

 

たくさんの声が少女に届いた。

 

その瞬間、彼女は気づいた。

自分の心の声を言葉にすることで、

世界はこんなに変わることができるんだ。

 

それからというもの、彼女は自分の心の声を恐れることなく、

絵や歌、言葉で表現するようになった。

 

そして、彼女の作品は多くの人々に勇気を与え、

心を豊かに彩っていく。

 

小さな声だった少女の心の声は、

いつしか大きな歌声となり、

いつしか大きな絵画となり、

世界中に響き渡った。

お茶漬け村

昔々、あるところに、

お茶漬けが大好きな村がありました。

その名はお茶漬け村。

 

村人たちは毎日、朝昼晩とお茶漬けを食べていました。

しかし、どの家のお茶漬けが一番美味しいのか、

いつも議論が絶えませんでした。

 

ある日、村長はついに決断します。

「お茶漬け選手権を開催する!」

 

ウォォォ!!

村人たちから歓声が沸き起こりました。

 

村中の誰もが参加でき、

自分のオリジナルのお茶漬けを作って優勝を目指す大会。

 

選手権当日、村人たちは思い思いのお茶漬けを作って

会場に持ち寄りました。

鮭、梅干し、海苔、納豆など、

様々な具材を使ったお茶漬けが並びます。

審査員には、厳しいことで有名な老料理人が座りました。

 

老料理人は、一つ一つのお茶漬けを丁寧に味わいました。

「これは!?」

 

そして、ついに結果発表の時が訪れました。

「優勝は・・・」

なんと小さな女の子でした。

そして彼女の作ったお茶漬けは、

あんこを使ったお茶漬けだったのです。

 

会場は騒然となりました。

「あんことご飯?」

「そんなものが美味しいわけがない!」

 

しかし、老料理人は一言、

「これが今まで食べた中で一番美味しいお茶漬けだ」

と言いました。

 

会場の人々は半信半疑で、

女の子のお茶漬けを食べてみました。

すると、なんと、これが本当に美味しいのです。

あんこの甘さとご飯の塩気が絶妙にマッチし、

今まで味わったことのないような味わいなのでした。

 

こうして、女の子は

「村一番のお茶漬けを作る天才」として称えられました。

そして、村人たちはあんこを使ったお茶漬けを

新しい定番メニューとして取り入れるようになったのです。

 

村中の人々に大きな笑いと感動を与えたこの物語は、

今では世界中に広められました。

 

どんな奇抜なアイデアでも、

挑戦すれば素晴らしい結果を生み出す可能性が

あることを教えてくれました。

 

あんこを使ったお茶漬けが本当に美味しいかどうか。

多くの人は、あんことご飯の組み合わせを想像すると、

顔をしかめるでしょう。

しかし、実際に食べてみると・・・

 

「是非、一度ご賞味してみてください。」

 

あんこ茶漬け村の村長より。

 

工事写真

午後のひととき、屋根裏部屋で

埃まみれの古いアルバムを手に取った。

そのアルバムは、幼い頃引っ越しの際に

荷造り中に見つけ、そのまま放置されていたもの。

 

ページをめくると、そこには

まだ家が建てられる前の更地で、

家族が笑顔で立っている写真だった。

まだ元気な祖父母。まだ若い両親。

 

私は、アルバムのページをめくっていく。

基礎部分から壁、屋根までが徐々に形作られていく様子。

克明かつ鮮明に記録されていた。

 

「引っ越し前の古い家は、古くて狭くて、冬は寒く、夏は暑かった。」

そう言っていた父の言葉を思い出す。

 

写真の中には、

必死に材木を運ぶ姿。

力強くレンガを積み上げていく姿。

丁寧にペンキを塗っている姿。

が映っている。

私は一枚ずつの写真全てに夢中になっていた。

 

上棟式の写真。

家族や親戚、近所の人たちが集まる姿。

大工さんたちと笑顔でお酒を酌み交わす姿。

竣工式の写真。

新しい家の完成を喜びいっぱいで祝っている姿。

家全体を眺める祖父と父の姿。

 

私は少し感動した。

 

写真をよく見ると母のお腹は少しずつ大きくなっている。

「そうか。私が生まれたのはこの後か。」

そう思うと、胸が熱くなった。

 

また、アルバムはそれで終わりではなかった。

 

次のページからは、

古い家から家族みんなで協力して荷物を運び出す様子。

病院で赤ちゃんを抱いて喜んでいる様子。

幼い私が、新しい家で楽しそうに遊んでいる様子。

が映っている。

私は一枚ずつの写真全てに思い出を重ね合わせていた

 

アルバムを見終えた時、

胸の中に温かい温かい感動が込み上げてきた。

家族の思い出と愛情が詰まった大切な場所。

 

私はそんな家が大好きだ。

 

青春七五三

13歳の健太、15歳の裕太、17歳の翔太。

三兄弟は今日も元気に過ごしていた。

 

しかし、今日は少しいつもと違う。

両親が仕事で夜遅くまで帰らないというのだ。

 

夕日が沈み始め、辺りが薄暗くなってきた頃、

翔太は台所に立っていた。

夕食の準備をするのは初めてだった。

少し緊張しながらも、冷蔵庫にある食材を眺め、

昔、母と作った料理をうる覚えで作り始める。

 

「裕太!手伝って!」

 

リビングのソファでゲームに夢中になっていた裕太は、

「はーい」とキッチンにやってきて野菜を洗う。

その様子に健太もキッチンへとやって来た。

「ぼくは?」「そうだなぁ。これを混ぜて」と、肉をこねる。

三兄弟は、それぞれ役割分担をしながら、

協力して夕食を作っていった。

 

台所は、三人の楽しそうな会話が響き渡る。

幼い頃の思い出話や、学校での出来事など、

ゲームの話や、普段はなかなか話せない話題も飛び出す。

 

やがて、食卓には、三人で作ったハンバーグや、サラダが並んだ。

三兄弟は、力を合わせて作った夕食を、笑顔いっぱいで味わう。

 

食事を終えると、三人はリビングに集まって、

テレビを見たり、ゲームをしたりした。

いつもよりずっと長い時間を一緒に過ごした。

 

「ただいま。」

夜が更け、両親が帰ってきた。

三兄弟は、今日のことを嬉しそうに話した。

「あのね・・・あのね・・・」

「うまくできたよ。」

「おいしかった。」

両親は、洗い物も終えたキッチンを見て、

三兄弟の成長を感じた。

 

「今日はケーキ買ってきたぞ!」

父からのご褒美に再びテンションが上がる。

 

この夜、三兄弟は大切な思い出を作った。

それは、家族の温かさや、兄弟の絆を

改めて実感できる、かけがえのない時間だった。

 

「おにいちゃん!また作ろうね。」

暗くなった部屋に健太の言葉が響き渡り

三兄弟は久しぶりに川の字で眠りについた。

希望の灯火

平和と繁栄に満ちていた世界は、

突如現れた「悪魔の病」と呼ばれる恐ろしい病によって、

深い闇に包まれてしまった。

 

この病にかかった者は、突如狂乱状態に陥り、

周囲の人を攻撃し始めるという。

その姿はまるで悪魔に取り憑かれたかのようだった。

 

病の正体も、治療法も分からず、

世界は絶望の淵に立たされた。

人々は恐怖に怯え、家に閉じこもり、外出を控えた。

街は静寂に包まれ、活気は失われていった。

 

「このままでいいのか!?」

 

世界中の人々がひとり。

またひとりと、立ち上がり始めた。

医師や科学者たちは、治療法の研究に没頭し、

政府は感染拡大の防止に努めた。

そして、市民たちもできる限りの協力を惜しまなかった。

 

「それぞれの立場から。できることを精一杯やろう!」

 

その人々の姿は、次第に希望の灯火となった。

国境や民族を超えて協力し、助け合い、

世界中の人々が一つになって「悪魔の病」との戦いに挑んだ。

 

そして一つになった世界中の

人々の想いと行動がついに実を結ぶ。

試行錯誤を重ねた末、「悪魔の病」の治療法が見つかったのだ。

それはまさに、世界中の人々の英知と努力の結晶だった。

 

「日常が戻ってきた。私たちは辛い思いをした。

しかしそれを乗り越えた。

そこには世界中の人々の行動と心があった。

悲惨な過去を受け止めよう。

同時に乗り越えた現実も受け止めよう。」

 

「悪魔の病」との戦いは、世界中の人々に深い絆を結ばせた。

国境や民族を超えて協力し、困難を乗り越えた経験は、

人々の心に深い感動と勇気を与えた。

 

「悪魔の病」との戦いは、決して簡単なものではなかった。

しかし、人々が力を合わせれば、

どんな困難にも打ち克つことができるということが証明されたのだ。