popoのブログ

超短編(ショートショート)

ショートショート

私の名前は

ある晴れた夏の日、 小さな命がこの世界に誕生しました。 両親は、その子の未来が明るく輝くようにと 願いを込めて、ひまわりと名付けました。 ひまわり、それは太陽に向かって 真っすぐに咲き誇る、希望に満ちた花。 まさにその名前の通り、彼女の人生は 多…

「ナイス!」

トオルは、どこにでもいるごく普通のサラリーマン。 ただ一つ、彼を特別にしていること。 それは、彼の口癖が「ナイス!」であることだった。 朝、目覚まし時計が鳴り響く。 けたたましい電子音に、まだ夢うつつの彼は 目をこすり、時間を見ながら一言、「ナ…

ペンは剣よりも強し

ある国の渓谷で生まれた私は、 幼い頃から学ぶことが大好きでした。 父は学校を運営しており、私はそこで 教育の楽しさと重要性を肌で感じて育ちました。 しかし、2007年にある組織が渓谷を支配するようになると、 私の日常は一変します。 組織は女性の教育…

俺はコンビニ店主

時計が午前7時を告げ、 「エブリマート」の灯りがブーンと音を立て始めた。 店主の俺はエプロンを直しながら、 いつもの期待感を胸に秘めていた。 その日最初の客、トレンチコートにつば広の帽子を かぶった背の高い男性が颯爽と入ってきた。 コーヒーと新聞…

迷惑メール

夜の帳が降り、街の喧騒が遠のく頃、 田中は自室のパソコンの前に座っていた。 彼の指はキーボードの上を軽やかに滑り、 次々と迷惑メールが生成されていく。 報酬をちらつかせ、巧みな言葉でターゲットを誘い込む。 今日の彼のターゲットは、最近手に入れた…

真夏の体験

うだるような日本の夏。 太陽がギラギラと輝き、 アスファルトからは陽炎が立ち上る。 そんな日、私たちはとっておきの場所へ向かう。 それは、凍えるようなクーラーの効いた部屋ではない。 キンキンに冷えたかき氷でもない。 もっと刺激的な体験が私たちを…

招き猫と七転八倒なご主人様

むかしむかし、寂れた商店街の片隅に、 埃をかぶった古道具屋がありました。 主は金次郎(きんじろう)という、 いかにも冴えないおじいさん。 金次郎は人生がまさに「七転八倒」そのもので、 何をやっても裏目に出る典型的なタイプでした。 ある日、金次郎…

七夕の夜

天の川を挟んで暮らす織姫と彦星は、 年に一度、七夕の夜にだけ 会うことを許されていました。 しかし、彼らの心には長年、深い溝が横たわっていました。 織姫は、彦星が自分の機織りの腕前ばかりを評価し、 自分自身の存在を愛していないのではないかと感じ…

あるピアノの一生

とある楽器店の片隅で、セシルは生まれた。 まだ真新しい木製の体は、これからどんな音を奏でるのか、 どんな物語を紡ぐのか、期待に胸を膨らませていた。 初めての持ち主は、小さな女の子、リリィだった。 リリィはセシルの前に立つと、 目を輝かせ、小さな…

ワンダーランド

アリスはスマートフォンから顔を上げて、 目の前の、いつもと変わらないカフェの喧騒に目を細めた。 イヤホンからは、お気に入りのインディーロックが流れている。 大学の課題に行き詰まり、気分転換にSNSでも見ようと スマホに手を伸ばした瞬間、奇妙なこと…

おへそのほくろ

私は、小さい頃からおへそにある 小さなほくろがずっとコンプレックスだった。 友達と海やプールに行く時も、 可愛らしい水着を着てはしゃぐ周りの子たちを横目に、 私はいつも、自分のおへそのほくろが目立たないようにと、 少し大きめのTシャツを着たり、…

あずきバー争奪戦

うだるような日本の夏の日、セミの声が降り注ぐ午後。 僕と兄は、リビングの床に転がり、 汗だくになってテレビゲームに興じていた。 対戦ゲームの熱気とクーラーの冷気が混じり合い、 独特の蒸し暑さが部屋にこもる。 「くっそー!そこは守りに入んなよ!」…

相対性理論

晴れた日の午後、 若き物理学徒のアルベルトは、大学の講義室でひとり、 アインシュタインの相対性理論について頭を抱えていました。 「時間は伸び縮みする? そんな馬鹿な…」 彼は理論を体感しようと、 まずは簡単な実験から始めることにしました。 台所へ…

小さな星の王子さま

私は、私の美しいバラを故郷に残し、 たくさんの星を巡り、私はあなた方の星に降り立ちました。 王子と呼ぶ者もいますが、 私はただ、遠い小さな星から来た旅人です。 私はたくさんの大人たちに出会いました。 彼らはいつも忙しそうで、 一番大切なことを見…

海を渡る

むかしむかし、太陽がさんさんと輝く平和な国がありました。 この国には、甘くておいしいリンゴがたくさん実る美しい果樹園と、 器用な職人たちが住む活気ある町がありました。 ある日、国の偉い学者たちが集まって話し合いました。 「我が国のリンゴは素晴…

演説のチカラ

皆さん、こんにちは! 今日、皆さんに語りかけたいのは、「演説のチカラ」についてです。私たちが日々触れる言葉の中に、どれほどの可能性と影響力が秘められているか、改めて考えてみませんか。 「演説」と聞くと、もしかしたら、大政治家や歴史上の偉人の…

夏の夜の贅沢

蒸し暑い一日が終わり、日が暮れても 都会の熱気はなかなか引かない。 そんな夏の夜に、俺は自宅の小さな露天風呂へと向かう。 俺は会社までの通勤は1時間半かける。 理由は都会の喧騒から隔絶された、自分だけの空間だ。 自然に囲まれた家の庭に作った露天…

希望の音楽

1970年代半ば、神奈川県茅ヶ崎の海岸には、 いつも若者たちの熱気が渦巻いていた。 その中心にいたのが、後に日本の音楽シーンを席巻する面々だ。 物語は、若き日の圭が、アコースティックギターを抱えて 海辺で自作の歌を口ずさんでいたところから始まる。 …

錆びたトタン屋根の向こう側で

1947年、ニューメキシコ州のとある町。 果てしない砂漠の真ん中にぽつんと立つ牧場で、 マックはいつも通りの一日を過ごすはずだった。 強い日差しがトタン屋根を焦がし、 カウボーイハットの下で汗がにじむ。 その日の夜、牧草地に雷鳴のような 轟音が響き…

奇跡のピッチ

「頼む、誰か!」「はぁ、はぁ……」 監督の枯れた声が、容赦なく照りつける 夏の太陽の下、グラウンドに響き渡る。 僕たちサッカー部は、残り5分で1点ビハインド。 選手たちの息遣いは荒く、疲労困憊の様子だった。 僕はベンチで、ただ祈ることしかできない。…

心と体

「まさか、私がこんなに夢中になるなんて」 そう語るのは、都内で働く30代の女性会社員。 彼女は今から5年前。 当時は仕事のストレスで心身ともに疲れ果て、 「何か新しいことを始めたい」と漠然と考えていた。 「最初は本当に軽い気持ちでした。職場の友人…

愛の絆

昔々、ある小さな町に、80歳になるヒデさんと、 78歳になるハナさんの老夫婦が暮らしていました。 二人は長年連れ添い、その関係は町の人々から 「理想の夫婦」と称されるほどでした。 毎年6月19日ロマンスの日が近づくと、 ハナさんはヒデさんに 「今年…

おにぎりの里

おにぎりの里は、豊かな自然に囲まれた小さな村でした。 清らかな水が流れ、たわわに実る稲穂が風に揺れる、 どこか懐かしい風景が広がるこの村では、 何代にもわたってお米作りが受け継がれてきました。 そして、この村のシンボルとも言えるのが、 愛情を込…

スーパーヒーロー警察官

夜の横浜、桜木町の街は、いつもよりざわついていた。 パトカーのサイレンが鳴り響き、高層ビル群の間に不穏な影が蠢く。 その只中にいたのは、一人の若き警察官。 僕の胸には、幼い頃からの憧れが刻まれた警察官のバッジが光っている。 しかし、今日はただ…

老舗和菓子屋の桜餅

春まだ浅い頃、由緒ある老舗和菓子屋 「花月堂」の店先には、今年も美しい桜餅が並んでいた。 八十路を越えた店主の一郎は、 ショーケースに並んだ桜餅を眺めながら、 遠い昔の記憶を辿っていた。 一郎がまだ幼かった頃、花月堂は彼の祖父が営んでいた。 当…

希望と無関心の狭間で

佐倉健、32歳。 都会の喧騒に紛れて生きる彼にとって、 満員電車と無機質なオフィスビルは日常の全てだった。 IT企業でシステム開発に携わる健は、 かつては人と関わることに喜びを感じ、 困っている人がいれば率先して手を差し伸べる青年だった。 しかし、…

つぐない

3月2日 娘の腕に小さな青あざを見つけた。 転んだと言っていたけれど、明らかに不自然だった。 5月12日 顔にまで傷ができていた。 保育園にどう説明すればいいのか、頭が真っ白になった。 6月4日 夜中に娘のすすり泣く声が聞こえるようになった。 声を…

星の雫

花屋の娘、美咲(みさき)は、 18歳になったばかりの少女。 彼女はいつも花に囲まれて育ち、 その色彩と香りに心の安らぎを感じていた。 美咲の夢は、いつか自分だけの特別な花を創り出すこと。 見たこともないほど美しく、誰もが笑顔になるような、 そん…

俺の生き様

「俺にとってロックンロールは、ただの音楽じゃない。生き様そのものだ。」 彼はそう言って、くしゃくしゃになったタバコを深く吸い込んだ。 年の功を感じさせる深い皺が刻まれた顔には、 数えきれないほどのステージで浴びてきた スポットライトの残像が焼…

黒潮の牙

塩の匂いを孕んだ熱い風が吹き荒れる中、 大海原に二隻の船が相対していた。 「黒竜丸」は、その名の通り漆黒の帆を広げ、 荒波を切り裂く竜の如く進む。 船首には禍々しい龍の彫刻が施され、 船体には無数の刀傷が刻まれていた。 甲板に立つは、黒竜丸の船…