popoのブログ

超短編(ショートショート)

2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧

10月31日

ハロウィーンの日がやってきた。 一人の若い男性は、仮装をして家々を訪ねていた。 彼は、この町に住んでまだ数年しか経っておらず、 子供の頃にハロウィーンを楽しんだ経験がなかった。 彼は、子供たちに楽しんでもらいたい。そう思い、 仮装をして家々を訪…

卵かけご飯

父は工場で働いていましたが、給料は少なく、 母はパートで働いて家計を支えていました。 大変な毎日を繰り返す日々でしたが、 いつも私に笑顔で用意してくれるご飯。 それが「卵かけご飯」でした。 私は、卵かけご飯を食べると、 お腹がいっぱいになるだけ…

ヒーローになる

僕は、夢見がちでちょっぴり元気な少年。 僕の心には、いつも大きな夢が広がっている。 それは “ヒーローになる” こと。 僕は、テレビや漫画で見るヒーローたちのように、 人々を助け、笑顔にすることが使命だと信じている。 少年は小さな事から始めました。…

小さな本屋

長きに渡り、皆様方にご愛顧いただきました。 「棚橋書店」は、本日をもって閉店することと致しました。 父の代から数えると60年と少し。 数々の出会いを与えてくれた。 賑わいを見せていたあの頃。 立ち読みするお客様を注意していた日が懐かしい。 店で…

特別な一日

これまでの人生で一番の期待と不安の日を迎えた。 カーテンを開けると外は快晴だ。 「今日は素敵な一日になる。」 俺は窓から外を眺めて、自分に言い聞かせる。 昨日は全く寝付けず、今日は珍しく寝不足だ。 「おはよう!」 出社すると、いつもの同僚と挨拶…

やり残した人生

人の寿命が30年だとしたら あなたはどう生きる? 高校を卒業して残されたのは12年。 あなたは何をする? もし、余命2年と告げられたら 今からやれることは何がある? 少しだけ考えてくれ。 俺は若い頃、起業して 会社を、事業を、大きくすることに 一生懸…

幻想と想像の世界

非日常的なドキドキ。 非日常的なトキメキ。 幻想と想像の世界。 僕はその世界が大好きだ。 数コマの紙が何人もの心を打つ。 ある漫画では冒険に出かける。 ある漫画では時空を超える。 他にも人の数だけ。いや、それ以上の物語がある。 僕は現実の世界では…

母の手がのびる

「ご飯が少し冷めたらこれ混ぜてね」 その言葉と共に、私の前に用意された調味料。 酢、砂糖、塩、ごま油。 さあ私の楽しみはこれから。 しっかり混ぜたら、私は海苔を敷き薄くご飯を広げる。 「しっかり混ぜたの?」 「大丈夫だよ。」 私は笑顔で次の作業に…

自慢のにいちゃん

俺には離れて暮らす弟がいる。 もうかれこれ15年近く会っていない。 俺は高校を中退してすぐ上京した。 パフォーマーとしての夢があったからだ。 俺は、深夜にバイトをして朝から練習に励んだ。 水道やガス、電気など止まることも多々あった。 それでも練習…

チョベリグの日々

スミスの1800。ハイビスカス。 ミージェーンのショッパー。シュシュ。 私の時代と言えば欠かせないものだった。 学校が終われば、日サロに通い、 どれだけ黒い肌になったかチェックする。 スクールバッグにはピッチかベルをいれて持ち歩く。 公衆電話を…

夢は夢にあらず

少年時代は「デブ」だと罵られ、 「モテたい!」その一心で俺は音楽を始めた。 最初は路上から、そして町の小さなライブハウス。 バンドも結成し、コツコツ貯めた僅かな金を握りしめ、 アメリカに渡って、ライブをした。 仲間と別れ、また新しい仲間とバンド…

お菓子の詰め放題

秋晴れの休日、私は幼い娘と二人である会場を訪れた。 「一袋500円だよ!」 目の前には数々のお菓子が並ぶ。 娘はまだ小さいが、たまにはお菓子をいっぱい食べさせてあげたい。 「やろっか?」 と言う私の声に、娘は「うん。」とうなずく。 「お嬢ちゃん…

勇気ある一手

若き才能、沢田は今30分の時間をかけ次の一手を考えている。 沢田はこの対局で予想だにしない局面に立たされていた。 対戦相手は将棋の天才と謳われた望月。 圧倒的な実力を持つ望月の前では、沢田の手もまるで読まれているようだった。 何度も悔しい思いを…

兵士である前に

兵士ジョンが戦場で負傷し、敵陣に捕虜となった。 ジョンは、敵国の兵士たちに拷問を受け、命の危機に瀕していた。 そんなある日、ジョンは、敵国の兵士が、 自分の母親と同じ名前の女性と結婚したことを知った。 ジョンは、敵国の兵士に、自分の母親のこと…

タッチ

俺はいつものように自宅のマンションを出る。 エレベーターを降りエントランスに向かう。 すると、入り口にランドセルを背負った女の子がいた。 小学校1年生か。2年生か。 「おはようございます。」 そう俺は声をかけた。 女の子は照れた様子で下を向く。 女…

負けちゃいかん

ここは町の外れ。築40年1DKのアパート。 気付けば今日で60歳の日を迎える。 昔は、人よりいいものが食べたくて 人よりいい暮らしがしたくて 人よりいい女を抱きたくて 俺はムチャばかりしていた。 それこそ20代のころは、サラリーマンしながら夜も働いた…

母との会話

俺は田舎のごく普通の家に生まれた。 俺が中学生の時、 「早く働いて楽させてね」 母は笑いながら言った。 高校生になると俺は部活に入った。 毎日遅くまで打ち込んだ。 家に帰ると、僅かなおかずだが、 毎日必ず食事が待っていた。 同級生の何人かが家を出…

ヘビーユーザー

「あ、あの。この商品。こ、この商品ですが・・・」 「資料おいといて。時間ないから。もういいよ。」 吉田はあがり症で、営業の成績は全くと言っていいほどダメだった。 「おい吉田。もうそろそろ結果でないと。」 「言いたいことわかるよな。」 「あ。あ、…

大丈夫よ。

「わかるわよ。」「辛かったわね。」「もう大丈夫よ。」 その優しい言葉に私は口を開いた。最初は少し。 「大変だったね。」 その言葉に、また口を開く。 気が付くと、私は全てをさらけ出していた。 私に起きた出来事。 私が何を考え、何を思うか。 私の精神…

始まりの合図

「バン!バン!」 懐かしい音。そしてこの時期がやってきた。 そう感じさせてくれる音。 涼しい風が吹き始めたこの季節。 学校の校庭から聞こえる音。 スピーカーから聞こえる声。 俺が通っていた頃は、組体操や騎馬戦なんてものがあった。 練習が始まると学…

通学の日々

「行ってきます」 不愛想な声で、私の一日が始まる。 自転車に乗って駅までの道のり。 毎日同じ道。同じ景色。 「おはようございます。こちら回ってください。」 (あ。ここで工事が始まるのかあ) 軽く会釈をして迂回する。 そしてまた駅までの道のり。 (…

突然の雨

ザアアア。 外は夜中から大雨が降っていた。 私は、何かスピーカーのような声で目を覚ます。 私は起きてすぐTVをつけた。 「緊急速報です。午前9時43分。今から10分ほど前。 新潟県を流れる早川で氾濫がありました。」 私は慌ててNEWSに目をやった。 私が…