popoのブログ

超短編(ショートショート)

夢は夢にあらず

少年時代は「デブ」だと罵られ、

「モテたい!」その一心で俺は音楽を始めた。

最初は路上から、そして町の小さなライブハウス。

バンドも結成し、コツコツ貯めた僅かな金を握りしめ、

アメリカに渡って、ライブをした。

仲間と別れ、また新しい仲間とバンドを組む。

やがて「ここでやるのは君たちが初めてだ。」

そんな夢の場所に俺たちは立った。

 

こういうと成功者に思うかもしれない。

でもその道のりは、順風満帆なものではなかった。

 

「生半可な気持ちでやりやがって!」

「私たちを裏切るの!」「やめちまえ!」

俺が音楽やる理由を罵られ、

古くからの仲間と別れ、少しでも可能性を感じる道を選ぶ。

『過去はいい。人間にあるのは「今」だけ。』

そう自分に言い聞かせて、前へと進む。

 

新しいグループでの楽曲は人気が出た。

新曲を出せば出すだけ売れた。

そしてある日、突然閃いた曲は絶大なるものとなった。

 

俺は「モテたい!」なんて自然と思わなくなっていた。

カッコつけなくなると、人ってすごくチャーミングになれる。

そう思うようになっていた。

 

俺は今、役目を与えてもらっている喜び。

たくさんの人に興味を持ってもらえる立場にいて、

大切な何かを伝える役割が自分には与えられている。

そう感じることにものすごく感謝する気持ちがある。

 

俺はもう64だ。

「16才のときめきを4人分。32才の情熱を2人分。」

そう思って、「今」を生きる。