popoのブログ

超短編(ショートショート)

ねぇ。

「ただの気まぐれだったから」

彼女との別れは突然訪れた。

 

あれは飲み会の帰りだった。

「ねえ?まだ一緒に飲もう?」

俺はその時から恋に落ちた。

 

「ねえ?今日お家行っていい?」

「ねえ?この映画観に行こ?」

「こら。寝すぎだぞ。」

「美味しいね。はい。あーん。」

「ねぇ!はやくー!」

 

その言葉と仕草、表情。

全てに俺は癒されていた。

 

ある日、友達と訪れた居酒屋。

俺たちが飲んでいると

入り口から腕を組んだカップルが現れた。

「ねえ?何食べる?」

 

俺は現実を疑った。

急ぐように出ていく彼女。

慌てて追いかける俺。

 

そして告げられた突然の別れ。

 

それから数日

俺はバカにされたように

腹が立って仕方がなかった。

 

「なあ。お前の彼女うちの店で飲んでるぞ。」

「ああ。もう別れたんだ。」

 

そう言って電話を切ったら

また一段と怒りが湧いてきた。

 

俺は急いで友人が働く居酒屋に向かった。

入り口の扉を開ける。

彼女がすぐ目に入った。

俺は一直線に向かった。

 

「なに?なんなの?」

 

「あー!まぢでムカつくよ。

腹が立って仕方ない。

遊びだったんだよな?

ムカついて仕方ないよ。」

 

「もういいじゃん。別れたんだから。」

 

「ああ。いいよ。

でもな。わがままで勝手で

ムカつくけど、

お前に会えないと

もっと俺はムカつくんだ!

こんなに会いたいって思う俺自身に、

腹が立って立って仕方ないんだ!」

 

その時の彼女の表情は覚えていない。

俺はただそう言って立ち去った。

 

「ねえ?このお家にしよっか?」

 

今はそんな彼女と一緒に暮らそうとしている。