popoのブログ

超短編(ショートショート)

リカちゃん

陽だまりの差し込む窓辺、

少女時代の思い出が詰まったおもちゃ箱を

そっと開ける。

 

そこには、色褪せながらも大切に保管された

リカちゃん人形が眠っていた。

無数の洋服や小道具。

幼い頃、夢中で遊んだ宝物たち。

 

毎日一緒に遊んだリカちゃん。

着せ替え、おままごと、おしゃべり...。

想像力豊かな世界が広がり、

夢と希望に満ち溢れた日々だった。

 

ふと、カレンダーに目を向けると、

そこには鮮やかな赤字で「5月3日」と書かれていた。

そう、今日はリカちゃんの誕生日だ。

 

誕生日にプレゼントをおねだりして

リカちゃんを手にした時の興奮。

新しい洋服を手作りして着せ替え、

おままごとで何時間でも遊んだ日々。

「懐かしいなぁ。」と胸が熱くなる。

 

私はリカちゃん人形を丁寧に拭いた。

そして新しいお洋服に着替えさせた。

するとまるで魔法にかかったように、

リカちゃんは再び輝きを取り戻した。

 

まるで私に何か話しかけるよう。

 

大人になった今、

すっかり忙しい毎日の中で、

あの頃のような純粋な心を

忘れてしまっていたのかもしれない。

 

でも、リカちゃん人形と再会したことで、

大切なことを思い出した。

 

夢を追いかける情熱、友達を大切にする心、

そして何よりも、自分が本当に好きなこと。

 

そうだ。

今年は久しぶりにリカちゃんの誕生日をお祝いしよう。