popoのブログ

超短編(ショートショート)

堤防の二人

俺たちは幼い頃から仲良しだった。

二人で毎日、学校の行き帰りに

一緒に近くの堤防を歩いていた。

 

俺(陽太)はお調子者で明るく元気な男子で、

いつも俺の隣で歩く彼女は優しい女子で、

俺の面倒を見てくれたり、本物の兄妹のようだった。

 

俺たちはよく、堤防の上で将来の夢について語り合った。

俺はプロのサッカー選手になる夢、

彼女は学校の先生になる夢を持っていた。

 

ある日、俺と彼女はいつも通り堤防を歩いていた。

すると、車が一台やって来た。

ものすごいスピードだったのを覚えている。

あっという間に近付く車。

慌てて避けようとする彼女。

次の瞬間には、

彼女は足を滑らせて、川に落ちてしまった。

 

俺は慌てて川の中に飛び込み、彼女を助けた。

彼女は無事だったが、俺は川の流れに押し流されてしまった。

 

どのくらい経ったのか、わからなかった。

気付いた時には大きな岩の陰に打ち上げられていた。

体中痛かったが、岩があったのが幸いだった。

 

濡れた体で俺は必死に川沿いを歩いた。

なんとか帰らないと・・・。と必死だった。

 

夜も暗くなり、野宿も覚悟しようかと思った時、

「ようた!ようた!!」

と、泣きながら堤防を走ってくる彼女が見えた。

 

あの時の安堵は今でも忘れられない。

 

心配したという彼女。

このくらい平気だという俺。

 

それでも彼女が「ありがとう。」と泣きながら言った言葉は、

今でも俺の胸に刻まれている。

 

それからというもの、

俺はプロを目指してサッカーの有名校に進学。

彼女は教師を目指して大学まで通った。

 

今でも俺たちは連絡をたまにする。

お互いの近況を話したり、悩みを打ち明けたり。

 

俺たちは、あの事件をきっかけに、

さらに強い友情で結ばれた。

 

決して恋へと結ばれる俺たちではない。

それでも俺たちは、かけがえのない親友だ。

 

最近ではお互いが、「どんな人と結婚するんだろう。」

なんて甘い話をよくしている。