popoのブログ

超短編(ショートショート)

あのトンネル

 

俺たちは男2人と女3人で

あのトンネルに向かった。

俺は運転手。助手席には親友。

後ろのシートに女3人。

「さあ。入るぞ」「こっわ!」「こわいー」

でもこのドキドキ感がたまらない。

でもこのワクワク感がたまらない。

 

トンネルに入ってしばらく

「お、おい。長くないか?」

「え?なに?こわい」

「いや…もう10分は走ってるだろ!?」

「やめてよ!」「もうムリ!」

皆は窓側に顔を埋めた。

後部座席の真ん中にいた女の子が言った。

「私をここに置いていかないでよ」

次の瞬間、車はトンネルを抜けた。

 

良かった。という安堵に包まれた。

「ちょっと待って!」

「ミホがいないんだけど…」

ミホ。彼女は後部座席真ん中に座っていた。

そのはずだった。

 

俺たちは警察に通報して

トンネル内を探してもらったが

彼女はいなかった。

そう。いるはずもないのだ。

だって彼女は車の真ん中にいたんだ。

 

俺たちは彼女の自宅に行き、

部屋がある2階で、帰りを待った。

泣いている女の子。不安そうな家族。

 

コツコツコツ。

階段を上がってくる音がする。

(警察か?)

ガチャ。扉が開いた。

 

「私をここに置いていかないでって

 言ったじゃん。」

 

そう言って彼女は扉を閉めた。

 

「お!おい!待てよ!」「ミホ!」

俺たちは慌てて立ち上がり

彼女の後を追うが、もう姿はなかった。

すると携帯が鳴った。

「もしもし」

「もしもし。今、再度トンネルを捜査したら

 彼女が見つかりました。」

 

彼女は…ミホは…

変死体のカタチで見つかった。

 

『謎の変死体』

「私をここに置いていかないでよ」

その言葉は新聞の一面を飾った。

 

なぜなのか。どうしてなのか。

はっきりしたことはわからない。

それでも、俺たちの悪ふざけは良くなかった。

それだけははっきりしている。