popoのブログ

超短編(ショートショート)

再生

「お願いです!助けてください!」

そう叫んで俺の前に飛び出してきた女性は

キズだらけだった。

「どうしたんですか?」

「助けて!襲われて!」

女性は俺の顔を見ると泣き出した。

服は破れ、脚や口からは血が見えた。

それでも女性は美しかった。

「行きましょう!」

「は…はい!」

「大丈夫です。もう大丈夫です。」

「はい。ありがとう。ありがとうございます。」

俺は女性を家に招き、傷の手当をした。

「コーヒーでも。」

「ありがとうございます。」

女性は少し落ち着きを取り戻したようだ。

 

私はいつものように仕事の帰りだった。

今日は見たい映画があり、少し暗いけど近道をした。

ちょうど街灯と街灯の間だった。

一人の男性が立っていた。

横を通り過ぎた時だった。

後ろから口をふさがれ、近くの工事現場に引きずられた。

私は無我夢中に抵抗した。

叫んで、手の届くものを投げつけたり、叩いたりした。

でも男性のチカラには敵わず、殴られ足を引きずられ…

そして男性がベルトを緩めようとしたとき、

私は全力で態勢を起こし、無我夢中に走った。

一度も振り返ることもなく、無我夢中で走った。

そして道に出た時、通りがかった車の前に飛び出した。

 

彼女はかなり疲れているようだった。

事の経緯を聞いて、話しながら震える彼女を見て、

当然だろうと思った。

俺は毛布を一枚差し出した。

「まずはゆっくりしてください。」

彼女は体力を使い切ったのか、軽くうなずいた。

そして俺は階段を上がった。

 

この出来事が一瞬のように感じる。

私はもう疲れ切っていた。

ソファにもたれながら、今いる状況を

やっと理解できるくらいになった。

あっ。かばんは?スマホは?私は周りを探す。

(あれ?)

私はやっと今いる部屋の異常さに気が付いた。

天井から吊るされた腕輪。

無造作に置かれたベットマット。

設置されたカメラ。

何よりここは地下だった。

そしてボイスレコーダーのようなものが机に置いてあった。

私は再生のスイッチを押した。

 

泣き叫ぶ女性の声と

「さあ。しっかり抵抗しろ。」

という男の声。