popoのブログ

超短編(ショートショート)

2025-01-01から1年間の記事一覧

海を渡って

1900年代半ば外国で生まれた彼女は、 幼い頃から歌と踊りに夢中だった。 日本の歌謡曲を口ずさみ、映画スターに憧れる少女は、 やがて日本の地を踏むことになる。 そして彼女は若くして日本で歌手となる。 透明感のある歌声と愛らしいルックスは、たちまち人…

おんぶ

私、あおいは、ママの背中にいる。 あったかい。 ふわふわの毛布みたい。 ママの匂いがする。 トントン、トントン。 ママの心臓の音が聞こえる。 不思議な音。 でも、なんだか落ち着く。 ママの背中は、私の特等席。 高いところから、色々なものが見える。 …

カニ看板

港町に住む小学三年生のケンとユイは、 いつも一緒に遊ぶ仲良しコンビ。 二人の秘密基地は、波止場の隅にひっそりと佇む、 古びたカニの看板のすぐそば。 看板は、かつてこの町で一番賑わっていた海鮮料理店のものだったが、 今は錆び付き、片目も取れてしま…

愛の光

穏やかに晴れわたった冬の朝、 老人のヨハンは、手入れされた庭の一角に咲くチューリップを見つめていた。 赤、白、黄色、紫… 色とりどりの花が咲き誇り、 まるで妻の笑顔のようだった。 ヨハンと妻のアンは、幼い頃からの友人であり、生涯の伴侶だった。 共…

限られた時間

これは今から数十年も前の話。 世の中にまだ携帯電話がなかった時代。 毎朝、目が覚めると彼はいつも同じことを考えていた。 「さあ。一日の始まりだ」 彼には彼女がいた。 しかし彼女の家は厳しく、 自宅の電話での会話がなかなかできない。 許された時間は…

セレンディピティ

古都の路地裏を散策していたあなたは、 ひっそりと佇む小さな雑貨屋にふと足を踏み入れます。 埃をかぶった棚の一番奥に、 そのぬいぐるみはちょこんと座っていました。 古びたクマのぬいぐるみ、片方の目が少し取れかかっていますが、 どこか懐かしい、温か…

6カ月

彼と彼女は、小さなカフェで知り合った。 明るく天真爛漫な彼女に、すぐに惹かれた彼。 彼女も、優しく誠実な彼に好感を持ち、二人は交際を始めた。 しかし、交際が始まって間もなく、 二人の間には様々な問題が起こるようになる。 彼は好かれたい一心に些細…

アフロへの想い

この手紙を書いている今も、僕は鏡に向かってアフロを触っている。 このモジャモジャの髪が、僕にとってどれほど大きな意味を持っているか。 小さい頃、僕はいつも自分の髪がコンプレックスだった。 友達からは「キノコみたい」なんて言われて、 しょっちゅ…

ほっこりホットケーキ

「お母さん、いつも美味しいホットケーキ作ってくれてありがとうね。今日は私が作るから、ちょっと待ってて!」 休日の朝、香ばしいコーヒーの香りが漂うキッチン。 いつも朝食は、母の愛情たっぷりのホットケーキが定番だった。 今日は、そんな母へ日頃の感…

原石

山奥の小さな村に住む青年は、 幼い頃からダイヤモンドに興味を持っていた。 彼は、ダイヤモンドは地球の中心から生まれると信じており、 いつか自分でダイヤモンドを見つけたいと夢見ていた。 ある日、彼は山で木を伐採していた。 ふと、足元に転がっている…

我が家の習慣

わが家は、少し変わった習慣を持っている。 1月23日を「ステップアップの日」と定め、 家族みんなで何か新しいことに挑戦する日なのだ。 始めたきっかけは、数年前。 カレンダーをめくると1月23日文字。 特に何でもない日。のはずだった。 当時3歳だった息…

カレーライスと男の涙

小さなアパートの一室。 テーブルの上には食べかけのカレーライスと、 男が顔をうずめている茶碗がある。 男は深呼吸をして、顔を上げる。 …また、食べ過ぎた。 どうしたの? 美味しかったんじゃないの? うん、美味しいんだ。 子供の頃から大好きでさ。 父…

地球の危機

2040年、世界は2つの超大国によって支配されていた。 一つは技術革新と経済力に優れる「アトラス」、 もう一つは軍事力と資源に恵まれた「オリオン」である。 両国は、あらゆる面で競争し、対立していた。 経済・豊かさ・資金力。あらゆる面での対立は 年々…

疲れた体

雪がちらつく寒い夜、私はへとへとに疲れて帰宅した。 一日中降り続いた雪で道は真っ白。 冷え切った体を引きずりながら、玄関のドアを開ける。 そこはいつもの温かい我が家とは少し違った。 「おかえり。」 リビングから聞こえてきたのは、彼の声だった。 …

大切な家族

雪がしんしんと降り積もる冬の朝、 飼い主の優花は、愛らしいチンチラのモモの様子を見に ケージの前へと足を運んだ。 モモは、ふわふわの毛並みを震わせ、くるまっていた。 「モモちゃん、寒いね。あったかいね。」 優花が優しく語りかけると、モモは大きな…

ヒーロー

幼い頃、私は父親をヒーローだと思っていた。 父はいつも優しく、力強く、どんな問題でも解決してくれた。 私は、父親のような人になりたいと夢見ていた。 ある日、父親が仕事で怪我をしてしまった。 父はしばらくの間入院し、歩くこともままならない状態だ…

いちごと彼女

いつものように週末の午後、 俺は一人、静かなカフェに足を運んだ。 窓際の一席に座り、本を開こうとしたその時、 メニューの一角に「いちごのパフェ」の文字が目に入った。 ふと思い出したのは、彼女が「いちごのパフェ、大好きなの!」 と目を輝かせて話し…

極寒の出会い

吹雪が荒れ狂う、一面銀世界の大陸。 そこへ一人、男が辿り着いた。 彼は探検隊の隊員として、この未知の大陸を調査するため、 長旅の末にこの地へやってきたのだ。 男は極寒の地で、体力を消耗し、意識がもうろうとしていた。 最後の力を振り絞り、雪洞の中…

成人の日

大好きなお父さん、お母さんへ いつもありがとう。 この手紙を書いている今、私は少しだけ大人になったような気がしています。 子供の頃、私が抱いていた夢は、少し形を変え、もっと大きなものになっていました。 それは、きっと、お父さんやお母さんの愛情…

知恵比べ

ある村に、とても評判の良いお殿様がいました。 そのお殿様は武芸だけでなく、 知恵も人一倍で、村人から慕われていました。 ある日、お殿様は暇を持て余し、 村人たちにクイズを出そうと思い立ちました。 「さて、村人諸君。私が今、持っているのは何か当て…

勝負のとき

一攫千金を夢見るフリーターの青年、大介は、 世界規模のオンラインゲーム大会 「ワールドチャンピオンシップ」への出場を決意する。 優勝すれば、賞金1億円が手に入り、人生が一変する。 しかし、強豪揃いの大会で、大介のゲームスキルは果たして通用するの…

七草粥

春の息吹、七つの彩 大地の恵み、心ゆくまで 小さな芽が、力強く 希望を乗せ、未来へ歩む 一年の始まり、七つの誓い 健やかな体、澄み切った心 感謝を込めて、いただきます 新しい一年、笑顔で歩む 七草粥を囲み、家族の輪 それぞれの想いを、言葉に 小さな…

初めての光

生まれたときから、世界は白黒だった。 茜色の夕焼けも、エメラルドグリーンの海も、 鮮やかな花々も、すべては陰影の濃淡でしか捉えられなかった。 彩色の世界は、私にとって永遠に手の届かない、 どこか遠い夢のようなものだった。 名前は、葵。 周りの人…

ショートケーキと過去と未来

午後の陽光が差し込むカフェ。 窓際の小テーブルには、淡いピンク色の 苺のショートケーキが置かれていた。 瑞々しい苺の赤色が、白くてふわふわの クリームの上でひときわ輝いている。 このケーキを見るたびに、 彼女はあの日のことを思い出してしまう。 彼…

澄み渡る空のような瞳

静かな午後の光が、窓辺で本を読んでいた少女の髪を金色に染めていた。 母親は、そんな娘の姿をリビングからじっと見つめていた。 娘の瞳は、まるで夏の空のように澄み渡っていた。 どこまでも続く青い空に、白い雲が ぽっかりと浮かんでいるような、そんな…

初日の出のキス

静まりかえった部屋に、柔らかな朝日が差し込む。 カーテンの隙間からこぼれ落ちる光が、眠る二人の顔を照らしていた。 「あ、もうこんな時間…」 女性が目を覚まし、横になっている男性の顔を優しく見つめる。 眠そうな目をこすりながら、男性もゆっくりと起…