popoのブログ

超短編(ショートショート)

いちごと彼女

いつものように週末の午後、

俺は一人、静かなカフェに足を運んだ。

 

窓際の一席に座り、本を開こうとしたその時、

メニューの一角に「いちごのパフェ」の文字が目に入った。

 

ふと思い出したのは、彼女が「いちごのパフェ、大好きなの!」

と目を輝かせて話していた時のこと。

 

幾層にも重なった生クリームと、瑞々しいイチゴが

美しく盛り付けられたそのパフェは、

彼女がどれほど喜んで食べていたか、鮮明に覚えている。

甘酸っぱい香りとクリームの甘さが

口いっぱいに広がるそのスイーツを、

彼女はいつも幸せそうに頬張っていた。

 

俺は思わず「いちごのパフェ」を注文し、

窓の外を眺めながらゆっくりと味わった。

同時に彼女の笑顔が脳裏に浮かぶ。

 

「そういえば、いちごのスムージーも好きだったな。」

 

そう呟きながら、俺はスマートフォンを取り出し、

以前一緒に訪れたカフェのいちごのスムージーの写真を見返した。

甘酸っぱい香りが口いっぱいに広がるその飲み物を、

彼女はいつも幸せそうに飲んでいた。

濃厚な甘さと爽やかな酸味のバランスが絶妙で、

彼女は「美味しいよ!」と俺に手渡した。

 

物思いにふけっていると、ふと甘い香りが漂ってきた。

店の奥から出てきたのは、いちごの入ったお餅だ。

 

彼女の実家がある街の和菓子屋で、

毎年この時期になると必ず買っていた和菓子。

 

もちもちとした皮の中に、甘酸っぱいイチゴが丸ごと一つ。

俺はその味わいを懐かしみながら、いちご餅も一つ注文した。

 

一口食べると、今までの幸せが蘇るような気がした。

彼女との甘い思い出が、一つ一つ心に温もりを与えてくれる。

 

俺は窓の外に広がる街並みを眺めながら、

改めて彼女への感謝の気持ちに包まれた。

普段は当たり前のように思っていた彼女の存在が、

こんなにもかけがえのないものだと気づかされた。

 

「やっぱり、彼女は俺の宝物だな。」

 

そう心の中で呟きながら、俺は静かにカフェを後にした。