「うわっ、すごい匂い!」
僕は、ショッピングモールの中庭に広がる香りに足を止めた。
甘辛い醤油のような香りに、食欲をそそられるスパイシーな香りが混ざり合って、僕の鼻をくすぐる。
視線を追うと、そこには見慣れない赤い看板が立っていた。
「K-CHICKEN」
聞いたことのない店名だ。
でも、並んでいる人たちの様子から、人気店であることは間違いない。
僕は、勇気を振り絞って行列に並ぶことにした。
しばらくして、ようやく僕の番が来た。
メニューを見ても、どれを選べば良いのか分からない。
店員さんに人気のメニューを尋ねると、にこやかに
「このチキンセットが人気ですよ」と教えてくれた。
「じゃあ!それくだい」
緊張しながら注文すると、店員さんは笑顔で
「揚げたてなので、少しお待ちください」と答えた。
待つこと数分、ついに僕の手に渡ったチキン。
熱々のチキンは、見るからに食欲をそそる。
一口食べると、カリッとした衣の中から、ジューシーな肉汁が溢れ出す。
肉の旨みが食欲をさらに引き立て、一口食べる度に幸せが広がる。
「うまっ!」
僕は、思わず声を上げてしまった。
今まで食べたことのないような、新しい味。
今まで食べたチキンとは全く違う。
「これ、外国で人気の味なんだって」
後ろに並んでいた女の子が、そう教えてくれた。
「へぇ、そうなんだ」
僕は、女の子と少しだけ言葉を交わした。
どうやら、このチキン店は海外から来たばかりらしい。
「また来よう」
僕は心の中でそう誓った。
それから十数年経った今、
僕はK-CHICKENの看板を見つめている。
「お待たせ!買ってきたよ!」
あの日の出会いは僕にとって忘れられない思い出。
今も大好きなこのチキンと、大切な彼女。