buzzer beater(ブザービーター)という言葉が、体育館中に響き渡った。
試合終了まであと1分。スコアは89対91。僅か2点の差でリードされている。地元チームの応援席からは、諦めきれないような、そしてわずかな期待を込めたような声が漏れる。
「お前ならできる。最後の1分、全力で頑張れ!」
ボールを持ったエースの翔は、深呼吸をする。汗で光る顔が、照明に照らされて真剣な表情を見せる。チームメイトからのパスを呼び込み、ドリブルを開始。相手チームの激しいディフェンスをかわしながら、ゴールへと向かう。
残り30秒。ゴール下まであと一歩。しかし、相手選手のブロックが待ち構えている。翔は一瞬ためらい、そして次の瞬間、体をねじりながら、ボールをリングへと放り投げた。
ボールは美しい弧を描いて、リングに吸い込まれるように向かう。しかし、それはわずかにリングの上を通過し、ゴールの外へと弾き出された。
会場からはため息が漏れる。残り10秒。絶望的な状況の中、ボールは相手チームに渡ってしまう。
しかし、翔は諦めていなかった。最後の最後まで、勝利を掴み取るために。
相手チームは、慎重に時間を使いながら、確実に勝利を手中に収めようとしていた。しかし、翔は隙をついてボールを奪い返す。
残り5秒。翔は再びゴールへと向かう。しかし、今度は複数の相手選手が彼を取り囲む。
残り3秒。翔は渾身の力を込めて、ボールをリングへと叩き込んだ。
会場は息をのむような静けさに包まれる。ボールはリングの上で何度も跳ね上がり、そして、ついにネットの中に消えた。
ブザーが鳴り響く。
スコアは91対91。劇的な同点。試合は延長戦へと突入する。
翔は力なくコートに倒れ込み、チームメイトたちと抱き合った。
残り1分という短い時間の中で起きた奇跡。それは、諦めない心と、チームワークの勝利だった。
この試合は、決して地元チームにとっての最後の戦いではない。むしろ、新たなスタートラインとなる。
残り1分の奇跡は、選手たちだけでなく、観客たちの心に深く刻まれた。そして、それはこれからも、彼らを突き動かす力となるだろう。